曲がり角

当地は紅葉の見ごろで県外からの車も多いのだが、この人たちは期日前投票を済ませてきたのだろうかと思いつつ投票に出かける。選挙期間の短縮だけでなく、投票所の数の削減や投票時間の繰り上げはコツコツと行われていて、実はいっぱしのボーターサプレッションにも余念のない本邦のイマココ。気がついた時には手遅れというのは歴史の教えるところである。

20時過ぎの雰囲気だとちょっと微妙な流れで、関西を中心に維新の一人勝ちとなれば実質的にこの国の政治の劣化は加速するだろう。吉本興業と結託したメディアが局地的なファシズムを台頭させたことは当事者にとっては強烈な成功体験となり、自公維新の悪魔合体が当面のこの国の方向を決めることになる。だがしかし、投票行動は野党共闘の成果にもつながっており、雌伏して時の至るを待つ局面でもある。

ミニマル

OSのメジャーアップデートにあたっては、まずはクリーンインストールを試みて必要なソフトウェアだけを追加していくというのが習いとなっているのだけれど、この度のmacOS 12 Montereyではまず1Passwordを入れて、物書堂の辞書とUlyssesを導入したくらいで環境構築が止まっている。ユーティリティではAlfredやPopclipを重宝していたはずなのだが、とりあえずなくても気にならないので、このままで行ってみようかという気になっている。1TBのSSDは今のところ50GB程度しか使われておらず、クラウドでことが済んでしまう傾向もあって、コンセプトとしてのクラウド、シンクライアントはそれが言葉であるときにはピンと来なかったとして、着実に現実化されているのでヴィジョナリーの偉大さに感心している。

最近はCanvaを使うことがあるのだけれど、このWebサービスがアウトプットのオブジェクトにフォーカスすることでクライアントソフトの必要性を揺るがしているのは明らかとみえる。まず、駆逐されるのはローカルに存在するファイルやフォルダという概念で、若い世代ではドキュメントファイルをうまく扱えない種族も出現していると聞くから、世界は変わっていく。

おかえりモネ

『おかえりモネ』は第120話にして最終回。ここまでの視聴者であれば、もちろん安直な結末を期待するものではないけれど、最終週水曜日の重い展開にはどうなることかと思ったものである。しかし無理のない着地をこなしつつ、その到来を明言しなかったコロナ禍はしっかり完結させる行き届いた脚本で、青い空のもとで主人公に雨を予感させて物語を閉じる。すべてが整うと雨が降る、という言葉の通り。

『インベージョン』の第4話を観る。初回は第3話までまとめて配信という趣向だったけれど、視点の多い話なので1話60分ではストーリーも大して進まないということなのである。とはいえ、いい感じに謎のメッセージの存在が明らかになってきて、次週刮目して待て。

イカゲーム

韓国ドラマ好きといってもいいと思うのだが『愛の不時着』の時と同様、いささか出遅れた感のある『イカゲーム』をコツコツと観ている。デスゲームを題材としたこのシリーズが、Netflixで新たに配信されたドラマとして史上最高の視聴回数を達成したと言われると、いささか驚くところがなくもない。殺伐とした世の中である。

作品自体は先行作品の存在を強く感じるとして、敬意もあるものとみえ、ひと昔前ならキッチュと評されたであろう美術全般も手の込んだもので、幕間の演出とあわせて奇妙なリズムがあるので人気があるのもわかる。しかしまぁ、もちろん、良い子が観るようなものではあり得ず、制作したNetflixの立ち位置はこの映画でのフロントマンと管理者たちということであれば、いろいろと洒落になっていないと思うのである。

漸進

macOS 12 Montereyをしばらく使ってみてもさしたる変化は感じられずにいたのだが、入力のたびにフォントがガタつくという、2バイトのフォント処理を適当にしていることが明らかであったメモが今さらよくなって普通に入力ができるようになっている。かつてカット&ペーストができるようになっただけで大幅機能強化と言われたiOSを思い出すような話であるものの、この改善は大きい。少しずつしかよくなることができないこの世界において、正しい方向に進むことができるというのは大したものなのである。

ブックのノドアキ表示も復活したりして、普段使いのアプリが地味に改良されているというのが今回のアップデートの収穫で、iPadOSとの内部的な統一も進んでいると思うので、あとはTVのクライアントがまともになっていると嬉しい。ミュージックと合わせ、とりあえず機能時の動作がスムーズになっているような気もするけれど、Big Surの時も肩透かしだったのでもう少し様子をみる必要がある。

Monterey

macOS 12 Montereyの配信が始まったのでこれを導入する。ソフトウェアアップデートでいったんアップデートしたあとの様子はBig Surとほぼ変わらず、バージョンナンバーを二度見したくらいだが、M1のMacではシステム環境設定のツールバーのメニューからiPhoneのような初期化ができるようになったので、これを試してみる。OSの更新にあたってはクリーンインストールを好む流派なのである。

確かにiPhoneやiPadみたいではあるものの、アクティベーションプロセスなどの差異はあって、微妙なリテラシーを要求される感じ。そもそもネットワークに接続できなければ詰む仕様ではあるのだけれど、USBのインストールメディアをつくるところから始めるものとは違ってエコシステムに組み込まれた印象はあり、OSのシステムレイヤーはまたひとつユーザーから覆い隠されたという感慨もなくはない。

ところで初期化したMontereyも表面的な進化の形跡はほぼ見られず、少し前に行われていたSafariのアップデートを除くとFaceTimeがちょっと変わっているくらいで、見た目の派手さがないのが好ましい印象のバージョンアップになっている。

Dr. ブレイン

11月からApple Originalのドラマにキム=ジウン監督の『Dr. ブレイン』が加わるというのでトレイラーを観る。死者の記憶をスキャンするという設定は先行作品が結構あるけれど、韓国ドラマなりに面白い展開になりそうな雰囲気があって、もちろん観るつもり。清水玲子の『秘密』を生田斗真や岡田将生で実写化していたけれど、ネタとして似通っているとすると、しかしサスペンスの作り方とプロダクションの技術そのものの差が可視化されるような気がしなくもない。

Appleにとっての韓国市場はSamsungとの競合があって日本ほど楽なものではないとして、意外に早く謹製の作品がラインアップされてきたあたりは、『イカゲーム』のブームをみるまでもなく韓国映画の発信力の強さを物語る。翻るに産業の国際戦略において、本邦の稚拙さは目を覆いたくなる状況にある。何しろ、クールジャパンと称して国内広告会社に金を落とすだけの政策であれば、自分の足を食べるタコとやっていることは変わらない。