安彦良和が監督としてファーストガンダムのエピソードをリメイクした『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』が公開になって、その作画のクオリティの高さが話題になっているみたい。何しろ、県内では長野市まで行かないと公開している劇場がないので、おいそれと駆けつけるというわけには行かないのだが、オンラインで冒頭10分が公開されているのでこれを観てしまう。なるほど、アムロ=レイは安彦良和の筆致のアムロなのだ。
そして、もととなっている『機動戦士ガンダム』第15話の『ククルス・ドアンの島』を観る。オリジナルエピソードはその作画の完成度の低さから、作画崩壊と謗られ「捨回」とまで言われる扱いだけれど、冒頭から合体ロボとしてのガンダムを思い起こさせてくれるエピソードで、スポンサーの要求を消化せんとするつくりになっている様子もあって興味深い。コンテナ式輸送機ガンペリーからのパーツ投下と空中合体のシークエンスの直後、こんなガンダムは見たくないというリュウ=ホセイのセリフにもある通り、制作サイドの悔恨が詰まった話なのであろう。
作画がどうこうという以前、ランニングと縞パンの下着姿で徘徊する『男おいどん』風のシュールなアムロは、『うる星やつら』の諸星あたると選ぶところがないのだが、当時はあまり違和感もなく観ていたはずである。情報量の増大によって、ガンダム世界の解像度はどんどん高くなり、ふたたび観察対象となったことで、今回劇場版のアムロは別次元のリアリティを獲得したというわけだが、この再収束のプロセスはなかなか興味深い。