『スヘルデの戦い』を観る。ノルマンディー上陸を果たした連合軍が、マーケット・ガーデン作戦で躓いた後のオランダ。ドイツの軛を逃れられるのではないかと喜んだのも束の間、やや持ち直したナチスの支配下にあって、協力者となっている医師とその娘、レジスタンス活動をする弟、グライダーが不時着してカナダ軍に合流することになる英国の兵士、ドイツ軍に身を投じている兵士といった複数の視点で物語は進む。ほとんど遮蔽物のない低地を進軍せざるを得ないカナダ第1軍の死闘を全編のクライマックスとして、それぞれの登場人物の運命が交錯する複雑な話が描かれる。オランダ映画としては史上2番目の制作費という話だけれど、国の転機ともなった激戦を扱おうという志が伝わるスケールで見応えがある。
そして、占領と解放というこの状況は現在、ウクライナで起きていることの写しでもあって、人間の歴史が相似を描くことの不思議とその当然を同時に感じざるを得ない。
『鎌倉殿の13人』は第45回、避けようもなく鶴岡八幡宮の大銀杏の顛末が描かれるけれど、実朝とは因縁浅からぬ歩き巫女の登場とその末路には震える。これまでデリカシーのない男として浮いた雰囲気を漂わせてきた北条朝時の使い方がまた、実に上手いのである。そして義時と平六のやり取りは全編屈指の見せ場でもあって、前回言及された嘘をつくときの癖のエピソードがここでも回収され、物語はいよいよ最終盤に向かう。