ドライブ・マイ・カー

『ドライブ・マイ・カー』を観る。40分を過ぎたところでタイトルバックが入ってきたのには驚いたけれど、179分の長尺であればそういうこともある。インターナショナル版とのことだが、特にドメスティック版というものはないみたい。

村上春樹の原作ということで期待される雰囲気と、濱口竜介監督の映画の方法は非常に相性がよく、村上春樹なのかチェーホフなのかというところはあるとして、3時間の尺も特に長くない。よく設計された画面は均整がとれているという以上に文脈を感じさせるもので、映画として高い評価を受けるというのも納得がいくのである。通好みという印象はある。

とはいえ、ダイアログさえ通り越してテキストそのものを重視する演出については、舞台稽古を題材として劇中で説明されているし、「私にとって言葉が通じないのは普通のことです」というセリフが配置されていたり、頬の傷がわかりやすい象徴として使われていたり、あれこれ至れり尽くせりという感じで難解なところがほとんどないのには好感がもてる。

いろいろと腑に落ちる演出ではあるけれど、北海道の雪道をノーマルタイヤで走っているのではないかという点については、ちょっとひやひやしたものである。多摩ナンバーのサーブがあらかじめスタッドレスタイヤを装着しているという設定はあるだろうか。いいけど。