マークスマン

『マークスマン』を観る。リーアム=ニーソンが主人公のロードムービーで、射撃の的中率100%の男が麻薬カルテルと戦うというのが日本向けの惹句なのだけれど、確かにリーアム=ニーソンが狙いを外すシーンはないとして、そもそも飛び交う弾の数は数えるほどである。監督が『人生の特等席』でデビューしたロバート=ローレンツだけあって、クリント=イーストウッドの『グラン・トリノ』に、『刑事ジョン・ブック 目撃者』ともしかしたら『マイ・ボディガード』の風味が少し入っている感じ。

アメリカの価値観を強くアピールする内容で、物語はメキシコからの密入国が日常となっている国境の牧場から始まり、元海兵隊でベトナムにも2回派遣された男が国境でのトラブルに巻き込まれ、託された子供をシカゴに送り届けることになる。このロードムービーは西ではなく、アメリカの心臓に向かう旅なのである。色褪せたアメリカの国章のイラストを背景に、メキシコ人の子供に銃の撃ち方を教えるシーンがあって、いろいろどうかと思うのだけれど、本国の一定の層には刺さるのであろう。その点ではアクション映画に仕立てようとしている日本の宣伝の気持ちもわかる気がするが、誰にとっても不幸でしかない売り方はやめたほうがいいと思うのである。

この日、日銀の黒田総裁が、家計が値上げを許容しているという自身の発言を誤解を受けたといって訂正する。もとの発言は前後の文脈を含めて誤解の余地なく言葉通りのことを言っているのである。中央銀行が言葉をごまかすようになるとは、いよいよ本邦もやばくなってきたと思わざるを得ない。