『光を追いかけて』を観る。1991年に秋田県内の広い地域で正体不明の光る物体が目撃され、翌朝にはミステリーサークルも発見される騒動があったということを知った上で、観たほうがいいような気がする。
CMディレクターである成田洋一が監督を務めた本作は、何よりキャスティングのよさが際立っており、自身も秋田県出身というだけある美しい田園の光景の撮り方と相俟って、そのままポカリスエットの長尺CMを観ているような感じ。中島セナが大人になりきる前に同年代を演じた映画として、そのうえに長澤樹という個性を見出した映画として評価されることになるだろう。
いい写真を撮影する心得に光に向かうというのがあるけれど、その通りファインダーはやや低めに太陽の光線を捉えて、収穫時期の田圃の黄金を映しとる。撮影は念の入ったもので、画面の美しさには力がある。
とはいえ、この作品のよさは映画というより映像作品のそれではなかろうか。キャラクターはどこまでも類型的であり、ストーリーそのものはあまりに凡庸で、おそらくセリフなしでも理解できるくらいの話だし、最後に花卉栽培で産業復興というレベルでは、ばかにするなという向きもあるに違いない。そこにUFOの話が馴染んでいるわけではないので、なぜミステリーサークルが描れるのかという疑問は当然生じて、しかもそれは観客の読解力の不足によるものではないのである。その出自が現実の騒動だったからといって、理解が深まるわけではないのだが。