小説というのは長ければ長いほどいいという流派があって、どちらかといえばその思想にシンパシーを感じるほうだから、電子書籍でも全巻合本版にはつい手が出てしまうのだけれど、Kindleのセールを眺めていると光瀬龍の『宇宙年代記 合本版』があったのでこれを買い求める。短編25本と『東キャナル文書』『喪われた都市の記録』の長編2本を収録して、文庫なら1,500ページを越える分量だが、そこは電子書籍のよさがある。角川文庫でまとめられたのは5年くらい前のことらしいが、電子の海の向こうの事象を見通すのは容易なことではない。知らなかったのである。
冒頭から宇宙の荒涼とスケールを感じさせる筆致の物語で、読んだことがあるはずのあれこれを思い出しながら読んでいるのだけれど、まずあらかた忘れている。幸せなことである。