この日、ドイツで第二帝国復活を目論む「帝国市民」なる集団25名が議事堂襲撃を画策した国家転覆の容疑で捕縛される。一部にロシアとの繋がりが取り沙汰される様子もあるのだが、「ハインリヒ侯子」を連邦首班とするクーデター計画には戦前回帰というより、『銀河英雄伝説』的な妄想世界の雰囲気が強く、その喜劇性そのものが『銀河英雄伝説』の一エピソードのようである。しかし、つまり、茶番だと切って捨てること自体が民主主義を危うくする考え方という種類の話であろう。
まことストーリーには世界を滅ぼす魔力がある。ひとりひとりがこれに加わることになった経緯を詳しく知りたいと思うのだが、帝国市民事件として詳細が伝えられる日は来るだろうか。これが歴史の一幕であれば、その後の大乱の予兆として語られる種類の話であり、もたらされる混乱の大きさから速やかに埋もれてしまうことになるのが常なのだが。