鳥の歌いまは絶え

ケイト=ウィルヘルムの『鳥の歌いまは絶え』を読んでいる。1976年に発表されたポストアポカリプス小説で、日本ではサンリオSF文庫から出版されていたけれど、叢書の終刊とともに入手困難となり近年、創元SF文庫で復刻されたもの。東京創元社はいい仕事をしているのである。

パンデミックも終わらないうちのウクライナ侵攻と気候変動の激化によって、最近の気分は終末っぽいのだけれど、この小説の冒頭、文明がなし崩しに滅びていく経緯は、今の状況にこそぴったりと合って、人類は、結局のところ『沈黙の春』と『成長の限界』によって見通された未来から逃れることはできないのではないか。

この日、岸田首相のコロナ感染が伝えられる。かなり以前からKF94マスクを常用していて、政治家のなかでも比較的に防疫意識の高いタイプとみていたのだが、この状況ではいつどこでウイルスに接することになっても不思議はないのである。このあと、永田町にも蔓延することになるとして、すでに思考停止の状況であれば、何か対策がとられることもないだろう。