地獄の花園

『地獄の花園』を観る。永野芽郁が世界観の説明をするタイトルバックまでの語りは面白いのだが、それだけといえばそれだけ。102分と比較的に短めの尺ではあるけれど、題材としてはコントのそれという気がするし、後半はカンフー映画となり結局のところ日常に回収されるところまで描いては、いったい何だったのかということになる。男女を二分した社会構造を風刺的に描いている今どきの映画なのに、どうやらジェンダーというものについて奥行きのある考えが何もないというというのは、かえって驚くべきことである。本邦の現在地についてのメルクマールにさえなるだろう。

この日、ロシア外務省のザハロフ広報官がイチゴを食べている奇妙な自撮り映像をポストし、これを伝えるニュースアカウントはとうに常軌を逸しているクレムリンの現在を心配する。

There is something seriously wrong with Moscow.

たしかに人間の壊れる過程を見ているようで、その映像には人を不安にさせる何かがある。

9人の翻訳家

『9人の翻訳家』を観る。ベストセラー小説の出版に向けて集められた翻訳家たちが地下のシェルターに軟禁されて作業を進めるうち、冒頭の10ページが流出する騒ぎが起こる。ダン=ブラウンの『インフェルノ』を訳出するときに秘密保持のため翻訳者を隔離したという話にインスパイアされたストーリーだということだけれど、サスペンスは商業主義への批判を横軸として編まれ、出版社のオーナーが際立った悪役として設定されている。アームストロングという役名は『オリエント急行殺人事件』から引いたものだろうが、誰かモデルがいるのだろうか。嫌われたものである。

物語は視るものの角度を変えながら真相を明らかにしていくタイプのミステリーで、練られたサスペンスとなっていて飽きない。只者ではなさそうなオーラの英語翻訳者を演じているアレックス=ロウザーも味わい深い雰囲気で、実はなかなかいないタイプではなかろうか。

松本

いろいろ用事が重なったので、休暇をとって午後は松本まで出かける。松本の市街地にでかけるのは、もしかしたらCOVID-19の感染拡大以来ということになるのだけれど、何しろ車を運転していても暑いという真夏の陽気なので、建物の間を素早く移動して用を済ませるという感じで、街中を散策しようという気にはちょっとならない。温度計は日中35度を表示し、光量が多過ぎて何もかもが飽和している。

この日、自民党の麻生副総裁が政治に関心を持たなくても生きていけるというのは良い国であると述べたという講演での発言が伝えられる。ある日、気付いたらワイマール憲法がナチス憲法に変わっていた、その手法に学べと発言した男の言うことであれば、いよいよこの国におけるナチス化の策動も仕上げにかかっているということであろう。結局は改憲まで至らないという見通しは甘いと認識しておくべきではないか。7月10日の参議院選挙はその将来に影響を与えるイベントとなる。