オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ

『オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ』を観る。昨年のシーズン1は確か冒頭だけ観て忘れていたのだけれど、シーズン2の開始にあわせてNHKプラスでまとめ配信が行われているのである。シーズン2には黒木華まで顔を出していて、それでなくてもキャストの分厚さには驚く。演出・脚本・編集をオダギリジョーであることはなおさら。なかなかのものである。

OpenAIが公開した文字起こしAIのWhisperを導入して動かしてみる。PythonとFFmpegにRustが動いていれば、pipでインストールするだけという手軽さで、もちろん日本語にも対応していて、Smallサイズのモデルでもかなりいい成績で文字起こしができる。動画ファイルを指定して動かすとWebVTT形式のファイルまで吐き出してくれる親切仕様で、何なら翻訳までできるのである。

流行りのStable Diffusionはまだ導入していないので、AIの具体的な果実を横目で見ているようなところがあったけれど、初めてシンギュラリティを意識した気がする。AIに絵を描いてもらうというのも主客が転倒したようなところがあるので、ツールとしての実用度はこちらの方がよほど高いのではなかろうか。

介入

この日、145円を越えて続く円安に日本が24年ぶりに単独の介入を行う。日銀のスタンスを踏まえれば、円が売られるのは自然の流れといえ、この介入も一時的なアンカーにしかならないだろう。何しろドルは5%を目指そうかという勢いで利上げを続けており、他の通貨もインフレに対処する姿勢を固めていて、空気を読まないのはトルコリラだけという状況なので、ドルを現金でもつというオプションが運用の選択肢となりつつあるからには。

この不透明な状況で、2ー3年は金利を上げないとして先行きにコミットした日銀のスタンスこそ異様で、選択肢をもちえない本邦の中央銀行のアセットバランスが既にデッドエンドにある証左ではなかろうか。

『すべて忘れてしまうから』の第2話を観る。設定はいいとして展開にやや不安があったのだけれど、話が動き始めた気配があり、気の利いたエピソードの呼応も差し挟まれて面白い。巻末のゲストアーチストは三浦透子で、相変わらずの歌の上手さに感心したけれど、このフォーマットもなかなかいい。

不穏

この日、ロシアでは「部分動員」が発令され、またひとつタガが外れる。予想されたシナリオのなかでは穏当な選択だとして、その分岐の果て、際限なく代償の大きなカードがきられていくのがエスカレーションというものであろう。「部分」ではありながら、ほぼ総動員に近い定義が可能というのが、戦争というほかない「特別軍事作戦」を展開している彼の国の言語感覚である。まず、30万人が動員されるという。そして国内のいくつかの都市で反戦デモが起き、状況に対する内外での圧力は高まっていく。

アルファでありオメガ

この日、新潟付近に再上陸した台風14号は太平洋側に抜けて温帯低気圧になる。このあたりでも朝方は大雨が降り、夜は秋を感じさせる気温となる。

ニュースはエリザベス2世の葬儀の様子を伝える。葬儀であれば慣用語に近く引用されているのだろうけれど、ヨハネ黙示録からの引用があってびっくりする。日常にアルファオメガが登場することはまずないからには。

I am the Alpha and the Omega, the Beginning and the End.

Revelation 21:6 は To the thirsty I will give water without cost from the spring of the water of life. と続き、葬儀の慣用語としては以降が眼目であろうけれど、振り出しが強過ぎて頭に入ってこない。

手もとの日本国語大辞典をひくと、『善の研究』の用例が載っていて「されば純粋経験の事実は我々の思想のアルファでありオメガである」と西田幾太郎がいい、本邦での膾炙の仕方としては、やはりこういう使い方であろう。

マトリックス レザレクションズ

『マトリックス レザレクションズ』を観る。『マトリックス』シリーズにはさしたる思い入れもないし、148分の長尺もハードルでしかないのだけれど、何となく観てみようかという気になる三連休最終日。

三部作の続編ではあるけれど、単独の作品として扱われ、続きものにする予定はないみたい。『リローデッド』と『レボリューションズ』が2003年だからほぼ20年経ち、シミュレーション世界のアイディアでも今や古典のようなものなので驚きは少ない。それゆえ、モーフィアスとスミスという主要な役柄で、オリジナルのキャストを変更した理由に興味は募る。ただの野次馬なのだが、リバイバル感の強い続編の同窓会的な雰囲気に違和感を持ち込んでいるのは、そのあたりの大人の事情なのである。

この数日、世界はCOVID-19の収束を語り始め、本邦においてもオミクロン以降の重症者の減少を理由としてモードの変化を唱える向きがあるけれど、死亡者数は第6波のピークと変わらず推移しているのだから、重症化を経ずして亡くなる傾向があるということだろう。毎日数百人にのぼる死者と、それを上回る数の超過死亡を受容しようというというのが方針で、それはイギリスやアメリカでは既に行われていることでもある。そう説明がないのは何故なのか。

この日、台風14号は九州を縦断して中国地方にかかる。明日には北陸から東北の太平洋側に抜ける予想となっているので、この地で風が強まるのは夜半のことになるだろう。

カーテン

『鎌倉殿の13人』第36回を観る。あらかじめ予告された畠山重忠の乱は予想外の肉弾戦という展開で武士の誇りと無念を描き、事態の収拾に向けて北条時政退場の筋書きが用意される。演じる坂東彌十郎の出番もあとわずかと思えば残念だけれど、今年ももう10月なのである。

優れた作品はもちろん時代を映すものだけれど、鎌倉の混迷に「政を正しく導くことが出来ぬものが上に立つ。あってはならないことです」という義時の台詞は、もちろん今の世と共鳴させようという脚本家の企みだろう。いつであっても、何のための政治かという問いが全てである。

そして本作で北条義時を駆動しているのは、三郎兄のいう「坂東武者の世」をつくるというビジョンであり、物語は承久の乱に向かって、ついには朝廷を下す顛末が描かれることになる。脚本家は最近、最終回の脚本を書き上げたということだけれど、結末はアガサ=クリスティの作品に着想を得たそうである。予想するに、それは『カーテン』ということになるのではないだろうか。征夷大将軍となって坂東武者と利害が衝突するようになった源頼朝を密かに殺めたのは、やはり義時だったということが明らかになる。その真相に辿り着くのは三浦平六ということになるだろう。そして13人目のユダは小四郎その人ということになるのではなかろうか。

アウトポスト

『アウトポスト』を観る。アフガニスタンの米軍の前哨基地で起きたタリバンとの戦闘に材をとった2020年の映画。舞台となるキーティング基地は深い谷の底、山に囲まれた戦術的な劣地にあって、非対称戦だとしても分が悪くみえるのだが、案の定という感じでタリバンの大規模な攻撃を受け激戦となる。アフガン版の『ブラックホーク・ダウン』という印象だけれど、この戦闘を決着させるのはB-1からの近接爆撃で、何かと荒っぽい。7人の米兵が亡くなっているのだが、タリバンの側は岩陰からわらわらと現れるNPCのような扱いで描かれ、前述の印象に繋がっている。そもそも何のための戦いかがよくわからないというのは、たぶん現実の写しであり、結局はこの国から撤収することになったのもわかる。

台風14号は猛烈な勢力を保ち九州南端へ。接近時には920hPa程度の中心気圧になるということだが、第二室戸台風や伊勢湾台風と似たような勢力というから、引き合いに出されるのも歴史的な被害をもたらした台風なのである。飛来物が凶器となる風速50mの予想で九州を縦断することになる。早々に特別警報が出される。