1.0

週明けのこの日、中国と香港の市場は記録的な売りとなって2008年以来ともいわれる下落を記録し、米国で上場の中国株もほとんど垂直落下という様子のチャートを描く。予想されていたことではあるけれど、3期目の続投を確認して選ぶことのできる未来は収束しつつあるということか。異常な権力集中が長い停滞の時間をもたらすことになるということを中国の人びとは記憶としてもっているのだが、それを真に理解している共産党大会の出席者は、中山服に身を固めた105歳の宋平翁だけではないかという、新陳代謝がかつての教訓を圧倒する時間帯にある。大きな代償を払って学んだことを、世代を超えて継承することの難しさと人間の愚かさは、先に本邦でも確認されている通り。

かつて利用していたObsidianがバージョン0.15くらいから、いきなり1.0となってベータの看板を外している。Second Brainを標榜するアプリは、それこそ雨後の筍のような状態だけれど、本命のひとつには違いないのでEarly Birdとしての特典を復活させてみようかと考えている。

疑心

この日、大西洋をつなぐ通信用の光ケーブルが3箇所で破断し、イギリスなスコットランドの一部でインターネットが使えなくなる。海底ケーブルの切断のほか、コンクリート溝からケーブルが消失したという話もあって、何らかの工作が同時に行われたということのようだけれど、やはりロシアの仕業だろうということになっている。もちろん組織的な所業の規模を考えれば、ほかに心あたりがないということになるけれど緊張状態を作り出すことそのものが目的だとすれば、状況はさらに剣呑になってきた。

『鎌倉殿の13人』は第40回。泉重衡の乱の真相もわからぬまま、闇堕ちした義時が和田合戦に向かおうという流れ。

退席

この日、中国の共産党大会閉幕式で、胡錦濤前国家主席が退席させられるというショッキングな映像が流れ、距離があるという李克強も中央委員から退任して、習近平総書記の3期目就任が決まる。歴史はこの映像を独裁体制が確立した場面として記憶するだろう。

この大会では台湾統一が党の歴史的任務であると明言され、同じ時期、アメリカ海軍の作戦部長は台湾への武力侵攻の可能性についてのタイムテーブルを2027年から2023年へと引き直す。ブリンケン国務長官が中国がこれまでよりずっと早い時間軸で台湾統一を追求すると指摘したのは先週のことである。台湾有事が現実の可能性として論じられるようになった局面に我々はいて、ウクライナに向けてのロシアの侵攻意図を概ね正しく分析していたアメリカの能力を疑う理由も特にないのである。

Ventura

新しいmacOSとiPadOSのリリースが10/25に決まり、ベータ版もRCに到達した様子なので、これをインストールしてみる。取り立てて不具合には気づかず、iPad ProはM1世代なので更新の看板機能であるステージマネージャーを使ってみるけれど、アプリもなんとなく新しいルールに追従している動きとなっていて、考慮不足に驚くようなところがないという意味で今回もいいアップデートなのではなかろうか。Apple Siliconへの対応を経てきているからには、パッケージマネージャーのHomebrewにも危なげなく、初期化して入れ直しているのだけれど、今のところ躓いたところはないみたい。

Venturaのステージマネージャーもほとんど同じ挙動ではあるけれど、あらかじめわかっている通り、大画面ではメリットはなくて間抜けな挙動にしかならないのでラップトップのモードで切り替えながら使うことになるだろう。

君の花になる

『君の花になる』を観る。TBSの火曜ドラマといってもアタリばかりではないという警戒はあるし、いまどきのBTSリスペクトなアイドルグループの成功譚という内容に個人的には心惹かれる要素は全くないのだけれど、吉田恵里香の脚本という一点において興味があったのである。

意外にも本田翼の初主演ドラマということだけれど、元気で、しかし悔恨を抱える主人公を演じ、いい仕事をしている。このひとのわかりやすくて、わかりにくい表情は好き。第1話からヤマ場が用意されたドラマのつくりはジャンル的によく出来ているし、韓国ドラマっぽさが漂っていると感想を言っても、それは今や褒め言葉なのである。当方にとっての萌え要素はほぼ皆無とはいえ、続きを観てみようという気になっている。

この日、英国のトラス首相が辞任を発表する。史上最短の任期のうち在任最長の女王の国葬を執り行った内閣として記憶されることになるだろうけれど、このひとの経済政策が誤りだったとしても、それは公約として予告されていたことである。民意は時に選択を誤り、市場と議会のシステムがそれを速やかに修正する様子をみると、かの国の民主主義はやはり正常に機能しているというべきではなかろうか。かたや我が国は、と思わざるを得ないのである。

英国式ユーモア

東福寺に伝わる日本最古のトイレに車が突っ込んで室町時代に造られたこの共同便所が破壊されたというニュースをBBCに教えてもらう。「スクワット」式に用を足すための設備は無事だったということだが、700年前から伝わる扉と建物の柱は大きく損傷したそうである。極東からこのニュースを取り上げる編集は、もちろん本邦のニュースよりも世界に目を向けていて、しかし自覚的な底意地の悪さもあって、とにかく文化の厚みを感じる。

9月ごろ、このパンデミックも終わりというバイデン大統領の声明に日和った感じもみせていたWHOは、この日、危機は継続しているとして直近の認識を示す。コメントでは新たな変異株のインパクトが拡大することにも予防線を張っているようである。ヨーロッパでは明らかとなっている再拡大が、免疫低下というよりは免疫回避によるものであるとすれば、ワクチンを軸とする戦略はやはりその前提が揺らぐことになる。ICUの設備が充実しているといわれるドイツで、最近の死亡者の増加が急であり、オミクロン株の拡大期の水準を超えてきているのは不吉なサインだと思う。

Moondrop

最近はaudio technicaのATH-RX70xにすっかり満足していて、イヤホンからは遠ざかっていたのだけれど、なんとなくIEMが欲しくなって、評判のいいMoondropのKATOを買ってみる。いわゆる中華イヤホンではあるけれど、フラッグシップらしく気合の入ったパッケージで、全面に萌え絵という癖の強いものである。最近、気に入っているNuPhyのキーボードも同じ体裁だったことを考えると、中国のハードウェアスタートアップの一角には似たような世界観があるようだ。何かを突き詰めることで、世界の半分を怒らせようと構わないという気概は確かに感じられるのである。

MacBook Proの内蔵DACはそれなりに優秀なので、とりあえずイヤホン直挿しでApple Musicのハイレゾ再生を聴いているけれど、なかなか塩梅がいい。となると、いろいろと欲が出てくるのだが、ここから先は沼である。