オリオン

この日、新たな月探査計画アルテミスの第一段階である月までの無人往還が始まる。ケネディ宇宙センターから打ち上げられたオリオンは、衝撃や宇宙放射線の影響を測定するためのセンサーを積んでデータ取りをするそうだけれど、かつて月を目指した人たちはそのあたりを精神力で乗り切ることが求められていたということだろうか、やはり。日本の探査機も2つ積まれていて、ラグランジェポイントを目指すEQQULEUSはともかく、月に衝突するもうひとつはOMOTENASHIというそうである。今や、科学の中立性に要らぬ疑念を抱かせる残念な名前ではないか。この程度の低い忖度がJAXAの精一杯というのであれば、やはり余計なことはやらない方がいい。

『すべて忘れてしまうから』の第10話を観る。Fと別れた1年後、どうしてこの物語が紡がれてきたのかというあたりが見えて、いろいろに収まりがつく、よいかたちの最終話。何だかんだと面白かったと思うのである。

エルピス 第4話

このところ毎週の楽しみとなっている『エルピス -希望、あるいは災い-』を観る。悪名高い神奈川県警がほとんど捜査をせずに事件を揉み消そうとしていると言及されるのがこのドラマである。そしてどんどん厚みを増していく眞栄田郷敦が相変わらずいい。普通の言葉によって紡がれるダイアログが、ゆっくりと自己欺瞞を削ぎ落としていくプロセスを体験している。

この日の深更、ポーランドの農場にウクライナを越えて飛来したロシアの巡航ミサイルが着弾して民間人の犠牲者が出たことが伝えられる。無論のことポーランドは今や、北大西洋条約第5条が想定する集団防衛の一部であり、NATOと戦っているのだという修辞でこの戦争を正当化してきたロシアが、ついに現出せしめた直接被害ということもできる。

医療非常事態宣言

県内には医療非常事態宣言が発出される。昨日時点の病床使用率は56%程度。病床使用率の過去の最高値は7割に満たないあたりなので、余力はほとんど残っていないということではなかろうか。かねて言われている通り、実際の確保病床は計算上の分母となる病床数よりも少ないというのが実力であろう。これから年末にかけて、医療負荷が増えることはあっても、これが減じる要素はあまりないように思われるのだが、つまり医療へのアクセスは急速に狭まるに違いない。幸い持病というようなものはないのだけれど、死活問題という向きも多いに違いないのである。

しかるに、第7波のピークに近い状態にならなければ、ほぼ何もしないというのが国の方針だそうである。もちろん、その規模に拡大してから何かをやっても手遅れ。

地方には行政区というシステムがあって、市政の下部組織という感じの位置付けで自治活動をしているのだけれど、ときどき由来のわからない力学が働いて何らかの活動の役を務めることになる。今年は福祉推進委員という役回りがあって、市の活動の一環で高齢者の家に弁当を配るというイベントに参加する。今年もCOVID-19感染拡大の影響でいろんなイベントが中止になっているのだけれど、これは昨年も行われていて、実存を確認するという点ではそこそこ重要な活動なのである。社会にこうした余裕があるのは、もちろん悪いことではない。

『鎌倉殿の13人』は大銀杏での惨劇の直前まで。このぶんだと源仲章は義時と間違えられたのではなく、ほとんど誅殺という感じで死ぬことになるだろう不穏な流れ。予告では「ここからは修羅の道だ」と義時らしき人物が呟いているのだけれど、もう随分前にその道に分け入ったと思っていたこちらとしては、次回刮目して待つほかない。

そして、バトンは渡された

『そして、バトンは渡された』を観る。原作の小説は未読。家父長的な家族の物語ではないとして、話そのものは意外な展開を重ねて観客を泣かせようという意図で作られていることがヒシヒシと伝わってきて、それでいて予定的な調和を強く感じさせるので、今ひとつ感心できない。なんだか不思議なストーリーなのである。永野芽郁の演じる主人公にどうしてそうなるの、と問うセリフがあって、「せやな」と思ったものである。

県内は連日2,000人を超える新規感染が確認されていて、病床使用率は医療緊急事態宣言の目安とされている50%を超える。この現実を見ることなく、やり過ごそうという雰囲気があるのだけれど、いやそういうわけにはいかんでしょ。取り立てて対策をとらず、一方でワクチンの効果は経時的に低下するので、結局のところ医療現場は崩壊し、医療弱者にしわ寄せがいくというのが今、見えている景色だが、国家レベルで認知的不協和に陥りつつある今では、避けがたい状況であるように思える。

エージェントなお仕事

Netflixで配信の始まった『エージェントなお仕事』を観る。STUDIO DRAGONの新作なので、もちろんクオリティは折り紙つきというところだが、このスタジオの作品は最近、品がよくなってアクのようなものが薄れてきたような気がしなくもない。登場人物がiPhoneを使う韓国ドラマというのに慣れていない。『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』で親友のトン=グラミを演じたチュ=ヒョニョンが全く異なる雰囲気で出演していて、もとは喜劇役者だというこの人の奥行きを感じる。

この日、法務大臣は死刑にハンコを捺すだけの地味な役回りなどと愚にもつかないことを言って顰蹙を買った閣僚が更迭される。『エルピス -希望、あるいは災い-』が直接的に扱う死刑制度をめぐり、ここまで醜悪な共感性の欠如を見せつけられると、現実はドラマより出来が悪いと思わざるを得ない。そして優れたドラマが時代に呼ばれるのを、またも目の当たりにしてるのである。

分断

この日、ロシアは一方的に併合を宣言したヘルソン州の州都周辺から撤退し、戦局に変化がある。とはいえ、今後はドニプロ川を挟んで膠着が続く可能性もある。アメリカの中間選挙はRed Tsunamiとまで言われた共和党の躍進がなかったことだけが明らかとなり、しかし結果は判然としない時間帯にある。明らかな分断があり、両勢力が衝突したまま厳しい冬が到来することだけが確かという2022年、暮れ。