『エルピス -希望、あるいは災い-』の第8話を観る。格好つけと自己評価しつつ、逃げるわけにはいかないと言い切る岸本琢朗の格好よさよ。もはや、眞栄田郷敦のファンであることを認めるにやぶさかではない。自己評価が高止まりしたまま、特に下がる必要を認めていなかったこの人物の変貌こそ、物語の醍醐味というものだと思うのである。
退社の日、会社の廊下を歩いていた岸本に駆け寄る武田信玄、岸本その人が紛れもなく一流のジャーナリストであることを認める桂木新太郎の登場にはちょっと泣く。第1話冒頭、自覚のないディレクターだった岸本に説教した男の再登場によって、物語はいよいよ終盤に傾れ込むということであろう。
そして物語の始めで、対話なく世代の異なる桂木を評価し見切ったつもりになっていた岸本が、世界の訳のわからなさと失われた浅川の「簡単さ」に涙するこのシークエンスは、全編のテーマを窺わせる重要な一節とみえる。「簡単さ」を諦めて訳のわからなさを受け容れていく眞栄田郷敦がまた、いいという他ないくらいいいのだが、渡辺あやの脚本の凄みもまた、ここに結晶している。