『9人の翻訳家』を観る。ベストセラー小説の出版に向けて集められた翻訳家たちが地下のシェルターに軟禁されて作業を進めるうち、冒頭の10ページが流出する騒ぎが起こる。ダン=ブラウンの『インフェルノ』を訳出するときに秘密保持のため翻訳者を隔離したという話にインスパイアされたストーリーだということだけれど、サスペンスは商業主義への批判を横軸として編まれ、出版社のオーナーが際立った悪役として設定されている。アームストロングという役名は『オリエント急行殺人事件』から引いたものだろうが、誰かモデルがいるのだろうか。嫌われたものである。
物語は視るものの角度を変えながら真相を明らかにしていくタイプのミステリーで、練られたサスペンスとなっていて飽きない。只者ではなさそうなオーラの英語翻訳者を演じているアレックス=ロウザーも味わい深い雰囲気で、実はなかなかいないタイプではなかろうか。