そしてこの数日、新しいPKMツールとしてHeptabaseを使っているのである。Y Combinatorのサポートを得たばかりのまだ若い製品で情報の流通が少なく、試用期間なしの年間83.88ドルのサブスクリプションに加入する必要があって、1円が140円という世界では早期割引の適用があっても月間1,000円程度にはなるというあたりが、まず大向こうのハードルになるとは思う。月額料金の設定も用意はされる予定はあるけれど今のところ利用はできない。とはいえ、サービスを育てるための支援と考えれば特に法外な価格でもないだろう。
返金には応じるということなので、まずは使ってみればいいと思う。エディター部分の使用感はMac界隈で台頭しているCraftにごく似た印象なので、ちょっと驚く。同じフレームワークを使っているのだろうか。実はWindowsでもCraftが使えればいいのにと思ったことがあったのだが、このHeptabaseでは同じ操作感のWindowsクライアントをあっさりと実現しているのである。Linuxまで含めたマルチクライアントを提供しているのは大きな強みといえる。
何しろCraftに似ているので、MarkdownではWYSIWYGでの出力表示を実現しているし、現時点でも十分な安定性がある。ローカルのクライアントということもあって、売りものの無限Map機能まで含めて動作スピードも全く問題ない。着々とリリースされる機能の安定性は高く、実用に十分な信頼性があるとみえ、台湾の開発者の仕事だけあって2バイト文字の処理も全く危なげがないのである。
リアルタイムの同期はまだ実装されていないが、Mac/Windowsのアプリがそれぞれ安定して使えるメリットは大きい。End to endの暗号化が入ってくると、もうこれでいいやということになるのではなかろうか。モバイルクライアントも将来の計画には入っているようだけれど、今のところMacとWindowsで満足している。
肝心のワークフローの体験は、メモとカードを別のレイヤーで扱うのが特徴となっている。ジャーナルに書きつけた内容やZettelkastenでいうFleeting noteを踏まえて蓄積すべき知識やアイディアの中核となるカードを作り、Mapでの視覚的な再構成を経て文脈をまとめるという作業は、アウトプットに向けた統合のプロセスをよくイメージできるもので、しっくりくる。最終的には文章でのアウトプットをサポートするための目論見はよく実装されているのではなかろうか。カードのつながりと配置はそのまま文脈の流れともなって、言語化のプロセスとしての合理性は高いと思うのである。とりあえずジャーナルに書き込んでカードにまとめるのはCraftでもできることだけれど、Mapこそ差別化のカギであり、ユーザーにとってはここに価値を認めるかどうかということになるだろう。
今のところ経験した不具合は、Windows版の画面で入力モードに入れないことくらいだけれどデータが失われたということはないし、3人ほどのスタートアップとしては製品の質は非常に高いと思う。順調に成長していただきたい。