ロシアの攻勢は続いている。この戦いのなかで全滅した島嶼防衛隊やMi-29でSu-34を6機撃墜したというパイロットが英雄的に語られ、ゼレンスキー大統領は首都の防衛を宣言する。この段階で、事態はロシアの望んだように展開していないだろう。大統領の亡命によって傀儡政権を樹立するというシナリオは潰え、ウクライナ首都での焦土戦が始まるという流れにおいて、国際社会はプーチンとその一党の資産凍結と没収という手段で徹底的に求心力を低下させる動きを継続することになる。この盗賊のような一派に対しては、それがいちばん効くのではなかろうか。
驚くべきことにTwitterへの投稿は全土で続いており、明らかな偽情報も氾濫するなかで、戦闘の断片をリアルタイムで垣間見る状況となっている。情勢分析を続けるOSINTアカウントが一時、一斉凍結されたのはロシアの仕業という情報も流れたが、ヨーロッパの戦乱において民間における戦争と情報のありかたは既に一変した。とはいえ、ウクライナが頑強に抵抗しているともいわれる前線の様子はほぼ伝わらず、この非対称はかえって凄惨な戦闘の状況を想像させる。
開戦前、国境に集結したロシアの部隊が5日間、食料の配給を受けていなかったという話もあって、もともと貧弱な露軍の兵站が、この多方面侵攻と本格的な地上戦を継続できるイメージもあまりないし、そもそもウクライナ全土の展開を考えるには展開兵力が少なすぎるという分析があったことも考えると、ウクライナの勝機はその持久にのみありそうだが、甚大な市民の犠牲をともなうことになる。この状況において、ロシアをサポートするすべての動きをこそ唾棄すべきであろう。