司令破壊

この日、種子島から打ち上げられたH3ロケットの試験機1号機は2段ロケットの点火が確認されず、司令破壊信号が送られて搭載していた「だいち3号」とともにフィリピン沖の深海に沈む。MRJの撤退に続き、この国の巨大技術の行く末が心配になるような話だが、原子力発電所だけは寿命を超え、60年を超えても運用できると強弁する土壌であれば、あらゆるプロジェクトが迷走することになっても驚くにはあたらない。

同じ日、健康保険証に代えてマイナンバーカードを使用するという方針が閣議によって決まる。これに連なる業者との癒着とそもそもの使い勝手の悪さが指摘されるなかでの強行突破で、おそらくはロケット計画とは比べものにならない粗雑な実装が無理矢理に展開され、稼働と同時に負債となるだろう。この国の斜陽は、かつて優位を誇った技術分野でこそ一層、顕著に表面化するに違いないのである。学問と科学、教育への投資を徹底的に怠ってきたことも、遠く繋がった話であるという気がしてならない。もちろん、直接には試験機に実用衛星の搭載をする羽目となった財務省の予算の配分に起因するとして。