アメリカ上空で発見された気球が軍事的な意図をもって中国によって運用されているとの発表がされ、結局のところ東海岸上空で撃墜された顛末は、やはりどうしたって、太平洋戦争当時の風船爆弾を思い出させる。無誘導の牧歌的な雰囲気とは裏腹に、偏西風を使った本土直接攻撃の結果としてオレゴン州でピクニック中の民間人の死者を出し、大陸間で初めて使用された兵器と認識されているくらいだから、この領空侵犯をたかが気球で片付ける気配がないのにも不思議はない。風船爆弾の場合には1万個近くが日本から放たれ、数百のオーダーでアメリカに到達したようだけれど、中国が気象観測用というこの気球が、どのような運用の結果としてアメリカまで到達したかは興味がある。ひょっとしたら制御装置もあったかも知れないが、どこから上げられたものなのかは大いに追求されるであろう。かつて、本邦でも目撃されたことがあるようだから、完全に風任せ、成り行き任せというわけでもないのではなかろうか。
そしてこの後しばらく、あらゆる気球や風船が、厳しく通報の対象となるのは間違いない。何だかよくわからない、字義通りの未確認飛行物体がぼんやり上空を漂うことが許されない時間帯にこの世界はある。