金利亢進下で失業率が低く留め置かれて、フィリップスカーブに調整が行われないことは、ここ暫くのインフレが、基本的には供給側の問題によって生じていることの傍証となっている。サプライチェーンの問題によって部分的に生じるモノの供給不足だけでなく、結局のところウイルスを回避しようとする人の行動変容が、移民労働力の離脱をともなう大離職を引き起こしていることが、インフレ圧力になっているとすれば、この理路によってウイルスに対する警戒心を消し去ろうというのが政府の政策目的ということになる。そこに中央銀行の出る幕はないであろう。
この前提でのみ一定の合理性がある5類化と脱マスクの同時進行は、一定割合で発生する死者と後遺症によるリタイアを容認することと表裏であり、しかも国内ではなく、アメリカの経済状況に対応したものである。この政権によってもたらされるあらゆる逸脱は、米国にとって都合がいいという一点で整合しているとみえる。この国の政治が、かの国の強い影響下にあるのは戦後一貫してそうなのだが、この極端はあまり例をみないものだ。