不明

高浜原発4号機で稼働中の原発の緊急停止があったばかりだが、東海第二原発でも冷却水用の海水ポンプが非常停止して非常用電源を喪失した状況となっているという。より深刻なのは、フェイルセイフが機能して機能停止したのは分かっているけれど、何故そうなったのかはわかっていないと伝えられていることで、既にして手に負えない惑星外のオーバーテクノロジーを見よう見まねで運用している地球人のようである。『無知の科学』を引くまでもなく、原理を知らなくても知識の成果を運用することは可能というのが人間のすごいところではあるけれど、福島第一原発から12年経ち、長い休止期間のなかでは細部の知識を継承する機会もなく、複雑な原発運用に不可欠な知識の総体というのはどうやら損なわれている。

このうえ、無理に無理を重ねて実現してきた60年の延長稼働を、さらに延長して運転しようという政治の目論見は、現場の実態を把握していないという点で極めて無責任だが、その無責任を裏打ちしている先々がどうなろうと知ったことではないという考え方は、稼働再開早々にあらゆる原発で運用上の異常な問題が噴出することによって打ち砕かれることになるだろう。ある程度は安全策によって回避されることになるが、シビアアクシデントにつながることになっても、本当におかしくない。

労働参加率

利上げとはつまり、需要側に働きかけることによって景気を冷却する方法だから、このまま景気後退のモードに入ってもおかしくないのだが、米国などをみても失業率そのものは低い状態でリセッションに至るほどのレベルにないというのが現在の状況だろう。労働市場の逼迫は、供給の目減りというかたちで継続していて、コロナ後も一定数が労働を離脱したままとみえる。

リタイアの繰り上げといったかたちでもう働くことをやめてしまった人が増えたという説明をよく聞くのだけれど、結局のところ、Long COVIDによって働くことができない層が常に一定程度、発生するという感染後の定常状態を示しているのではなかろうか。

労働の供給問題が続く限りもともと下方硬直性のあるサービスの価格は下がらず、資源価格も高止まりという状況で、インフレを封じ込めるというのは偉業に属する。利下げでコロナ後遺症と戦っているのだとすれば、これがWithコロナの代償ということではあるまいか。

ブラックパンサー / ワカンダ・フォーエバー

三浦透子のボーカルが好きでアルバムを聴いている。最近では『エルピス』のチェリーさんで印象的な演技をしていたけれど、歌唱も大層、聴かせるのである。演技が先ではあるようだけれど才能というのは隠しておけないものである。

『ブラックパンサー / ワカンダ・フォーエバー』を観る。この頃はMCUについて、さほど熱心な観客とはいえないのだけれど、さきにチャドウィック=ボーズマンが大腸癌で亡くなったのを『ブラックパンサー』はどのように乗り越えたのかということに関心があったのである。劇中でもティ=チャラは難病で亡くなり、その死を乗り越えて妹のシュリがブラックパンサーを継ぐという物語はヒーローもののある種の定型を踏まえたものでもあって、違和感はあまりないものになっている。しかし、『エンドゲーム』からこっち、決して帰ることのないヒーローを何人も見送っていることが、MCUの世界観そのものに影を落としているような気がしなくもない。

AirPods Pro 2

IEMはMoondropのKatoの音質にすっかり満足しているので、このところのオーディオデバイスの探索は沈静化していたのだけれど、秋にAirPods Proをお嬢にあげてしまったことがあって、ワイヤレスはひとつあってもいいかなと思っていた。Katoの遮音性がかなり高いこともあって、ノイズキャンセル機能はわりとどうでもいいのだけれど、取り回しを重視する方である。そうなると選択肢は第2世代のAirPods Proくらいということになるので、あまり迷わずこれを買ってみる。

新たにH2チップを搭載して、あらゆる細部の完成度が上がったという感じの製品になっているのだが、肝心の音質も解像度が上がった印象でこちらの使い方では文句をつけるところがない。底上げを着実に果たすあたりは簡単にできることではないので、いかにもアップルらしいアプローチに感心したものである。

Macで使ったときにブラウザによって音質が違うことに気がついたのだけれど、Chromeでは空間オーディオが働いていない様子で、明らかにSafariの方が豊かな音になっている。以前はここでの違いはあまりなかったと思うのだが、なるほど、ソフトとハードの連携によって顧客体験を改善するというのはまさにこういうことであろう。エコシステムに完全に取り込まれている身としては、この淡々とした前進に驚いたのである。少なくともしばらくは、デフォルトのブラウザをSafariに戻して運用することになると思う。

ミュート

Twitter APIの有料化にともなってJetPackのTwitter連携機能がどうなるかはまだわからない、というメールがWordPressから届いているのだけれど、その有料化もリリースは二転三転して、あいかわらずぐだぐだな感じになっている。Twitterのようなマイクロサービスの壮麗な集合体は一気に崩壊するわけでなく、老朽化した城のように、徐々に不具合が多くなりやがて荒廃していくというのが滅びの道ということだけれど、最近は実にそんな感じで、意味のわからないエラーがちょくちょく顔をだす。やがてパーティは終わり、廃墟の手前のような感じでその記憶をさらすことになるのであろうか。

そして2段階認証を課金ユーザーの機能にするということになったらしいのだが、安全の有料化とは、さすがに来るところまで来たという感じがすごい。

そうはいってもTwitterを眺めることはあるのだが、サードバーティアプリの排除の結果、公式しか無くなった画面の「おすすめ」には、この頃、頻繁にかのCEOのTweetが出現するという地獄のような状況で、特別に誂えたアルゴリズムによって優先表示されるようになったという話を聞いて、そっとアカウントをミュートする。いやはや。

売国

金利亢進下で失業率が低く留め置かれて、フィリップスカーブに調整が行われないことは、ここ暫くのインフレが、基本的には供給側の問題によって生じていることの傍証となっている。サプライチェーンの問題によって部分的に生じるモノの供給不足だけでなく、結局のところウイルスを回避しようとする人の行動変容が、移民労働力の離脱をともなう大離職を引き起こしていることが、インフレ圧力になっているとすれば、この理路によってウイルスに対する警戒心を消し去ろうというのが政府の政策目的ということになる。そこに中央銀行の出る幕はないであろう。

この前提でのみ一定の合理性がある5類化と脱マスクの同時進行は、一定割合で発生する死者と後遺症によるリタイアを容認することと表裏であり、しかも国内ではなく、アメリカの経済状況に対応したものである。この政権によってもたらされるあらゆる逸脱は、米国にとって都合がいいという一点で整合しているとみえる。この国の政治が、かの国の強い影響下にあるのは戦後一貫してそうなのだが、この極端はあまり例をみないものだ。

共謀共同正犯

IOCの狂気は来るところまで来ているという感じがするけれど、2024年のパリでのオリンピックにロシアとベラルーシが参加することを認める方向というのは、その最新の事例ということになる。侵略戦争の当事者が参加を認められないというのであれば、侵攻には身の覚えがある米国なども困ったことになるかもしれないけれど、この状況でロシアの肩をもつ判断ができるのは、相当に後ろ暗いところを握られているのだろうとしか思えない。東京がそうであったように、ソチでも兆単位の金がどこかに消えたのだが、もちろん開催側は同じ穴に棲むムジナであったろう。公金を掠めるための装置としての五輪は、自動的に事案の共謀共同正犯を炙り出す機能も併せ持つようである。

このところ寒さが緩んでいたのだが、今朝あたりは強烈な冷え込みで、またしても-10度を割り込む。