キル・ボクスン

Netflixで配信の始まった『キル・ボクスン』を観る。チョン=ドヨンが殺し屋を演じるアクション映画。このチョン=ドヨンは『イルタ・スキャンダル』よりも圧倒的に格好よくて、凄みと美しさが同居する。冒頭、関西ヤクザの怪しい日本語から始まる異界な雰囲気に、凝りに凝ったグラフィックがのってくるあたりで傑作に違いないことは明らかとなり、『ジョン・ウィック』をさらにノワールに寄せた感じの世界観がまた楽しい。『キル・ビル』よりもこっちの影響が明らかのようにみえるのだが、根底にあるのはアジア的な情念というのがいい。

高度に計算されたアクションとカメラワークが堪能できるので、137分の尺がまったく長くないのである。チョン=ドヨンが撮影中に負傷して制作が一時、中断していたという話だけれど無理もない。

XBB.1.5

正直いって既に随分と広がっているのではないかと思っていたのだけれど、XBB.1.5が県内で初めて確認されたということが報じられる。ゲノム解析をわりあいきちんと続けているのだということに感心するくらいだから、こちらの期待値もだいぶ下がっている。

都内でもそろそろ支配的になろうとしているらしいから、第9波はこの拡大によってもたらされることになるだろう。どうやら5類への移行は本当に感染拡大のさなかに行われることになりそうである。

非常事態

この日、福島第一原子力発電所の事故現場でメルトスルーした核燃料の残滓によって全体を支える人工岩盤の多くが消失した映像が公開される。事故から12年、未だ原子力非常事態宣言が解除されない状況にあって、つまり圧力容器を含む全体の状況の危険は変化しておらず、地震でもあれば現在の定常状態は容易に崩壊して次の定常状態に至るまで汚染を急速に拡大するということである。

これがアンダーコントロールの実相で、何も出来ていない以上は、その言葉が虚偽でしかないのは明らかであったけれど、今日では原発再開などといっているその狂気が心底、恐ろしい。

Microsoft Word

このところ、仕事以外でもよくWordを使っている。まさに飽きるほど使ったソフトではあるけれど、それゆえ大抵の機能は使いこなすことができるし、漸進主義的に長期の熟成を経たアプリであることは間違いないので、だいたいのところ安定して動いてくれる。そういえば最近は意図せずに落ちるというようなことがないので、しみじみ長い道のりを歩いてここまで来たという気がする。評価のハードルは大概、低い方である。

最近はWeb版のWordも機能が充実してきて、テンプレートに依拠するような設定を除くと足らずを意識することも稀である。UIがやや古びてきたところが難点で、ブルーのタイトルバーは更新されないのかと待望しているところ。

シーズン1

ぼちぼち、と思っていた『ナイト・エージェント』のシーズン1全10話を週末にかけて観終える。思った以上に『24』っぽいところがあって、何だか懐かしい気がしたものである。直近でシリーズを踏破した『ザ・リクルート』のクリフハンガーでのシーズン1終了に比べると、比較的にキレイに片付いた感じがあって、こちらはシーズン2製作ということにはならないのではなかろうか。2000年代ヒーローのリバイバルという印象で、アップデートされた感じがないのは当作のよいところであり、至らないところでもある気がする。

不可視

さして根拠もなくマスクの着用を緩和して、5月8日をもって5類への変更を強行するだけでなく、新型コロナウイルスによる死者の発表を2ヶ月後にするという策謀がすすんでいるそうである。何度となく国民を罹患させようというのが基本的な方針になってから、事態の隠蔽が大きなテーマになっているのに不思議はないが、既に大幅に増加している超過死亡の数字が覆い隠された死者の群れを示唆することになるだろう。

直近の抗体保有率が国民の4割を少し越えるくらいである以上は、第9波は遠からず到来して再び病床を埋めることになる。その最中、5類感染症への移行など正気とも思えないが、これがジャーナリズムの壊死した国の末路ということであろう。そしてこの数日、感染確認は再び増加傾向にある。

無垢なる証人

『無垢なる証人』を観る。2019年の韓国映画。事件の目撃者となった自閉症スペクトラムの少女と、自分の仕事に鬱屈を抱えた被告側の弁護士が親しくなる。少女の目撃証言の証拠としての能力を覆そうとする裁判のなかで、弁護士は被告の言動に疑いをもち、職業的な葛藤をも抱えることになる。

自閉症スペクトラムを題材としたドラマがさすがに多すぎるのではなかろうかと思うけれど、演じたキム=ヒャンギの仕事は素晴らしいものだし、この少女の話が『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』を生んだという気がしなくもない。

法廷ものとして悪くない仕掛けが施されていて、生きづらい社会にあっても、全ての生まれてきたものや、良く生きようとする人を祝福しようというという脚本の意図は明確で、全体によく出来ている。主演のチョン=ウソンは、本邦なら福山雅治という印象で、ひたすらいい男というほかない。