トップガン マーヴェリック

『トップガン マーヴェリック』を観る。もちろん評判になっていたのは知っていたけれど、今さら『トップガン』かという気持ちが少しあって、しかしトム=クルーズのことだからあまり無様なことにはなるまいとも考えていたのである。いや、それにしたってF-18はともかく、トムキャットまでも立派に飛ばして見せるとは。デススター攻略とダブるモチーフで直線に書かれたストーリーは分かりやすく、オールドファンのうろ覚えをサポートしながらすすむ。主権国家に対する侵犯をアメリカ映画が平然と行うようになったあたりに、時代の変化を感じるばかり。

金曜夜、アメリカではシリコンバレーバンクが経営破綻して預金保護が発動する。金融システムの全体が俄かに影響を受けるというのは当局が阻止するだろうが、順調な成長をアテにしてきたレバレッジのコストが現実に引き戻される過程では、ちょっと想像もしないような連鎖が起きるに違いない。

US Keyboard

ゆえあってSurface Proの英語配列のキーボードを探したのだけれど、どうやら日本でこれを買い求めることは大変、難しいらしいということを知って悄然としている。そういえばロジクールも英語配列は国内販売を避けていて、いわゆるグレイインポート対策なのだろうけれど、せっかく脱着可能なカバータイプのキーボードなのに、付け替えることもできないというのはどうなのか。Appleはちゃんと売っているではないかと思わざるを得ない。実際のところ、その差はどこから来るのであろうか。

パワークラシー

放送法の解釈をめぐる行政文書を、当時の所轄大臣が捏造と主張して居直るという事件が起きている。言論に対する弾圧ととられかれない発言の記録を、自分の記憶と違うという理由で虚偽であると主張しているのだが、自身の政治的立場を守るために行政の信用の源泉を毀損しているという指摘は全くその通り。かつて安倍政治であったものが、さしてカリスマ性のない首相に継承されて凡庸化し、いわば標準装備となったという嘆きもあったけれど、それも選挙で多数議席をとったという学級会レベルの拠所をもつに過ぎない話だから、これを覆していくほかないのである。しかし。

司令破壊

この日、種子島から打ち上げられたH3ロケットの試験機1号機は2段ロケットの点火が確認されず、司令破壊信号が送られて搭載していた「だいち3号」とともにフィリピン沖の深海に沈む。MRJの撤退に続き、この国の巨大技術の行く末が心配になるような話だが、原子力発電所だけは寿命を超え、60年を超えても運用できると強弁する土壌であれば、あらゆるプロジェクトが迷走することになっても驚くにはあたらない。

同じ日、健康保険証に代えてマイナンバーカードを使用するという方針が閣議によって決まる。これに連なる業者との癒着とそもそもの使い勝手の悪さが指摘されるなかでの強行突破で、おそらくはロケット計画とは比べものにならない粗雑な実装が無理矢理に展開され、稼働と同時に負債となるだろう。この国の斜陽は、かつて優位を誇った技術分野でこそ一層、顕著に表面化するに違いないのである。学問と科学、教育への投資を徹底的に怠ってきたことも、遠く繋がった話であるという気がしてならない。もちろん、直接には試験機に実用衛星の搭載をする羽目となった財務省の予算の配分に起因するとして。

大団円

『イルタ・スキャンダル』の配信最終週、第15話と第16話を観る。オーソドックスなドタバタ、ツンデレのラブコメとして始まった本作だが、仕込まれたサスペンス部分の回収は重く無惨な結末で、結局のところ真のスキャンダルとなったわけだけれど、この部分の騒ぎはあったとしてほぼ語られず、強引に大団円へと向かう。収まりはこれこそ韓ドラという感じ。面白かったけれど、再読するにはいかにも長いという物量の制約から辻褄の帰結は雰囲気が重視されるのである。

『愛の不時着』と『梨泰院クラス』が配信の上位にずっと残っている時期があって、その長さをものともせず、これは繰り返し視聴するファンの存在あっての偉業であったろう。膨大な数の韓ドラ供給は、一作品あたりに払われる関心の量を分散させる希薄化の効果もあるのだろうけれど、もしかしたらここにはリコメンドのアルゴリズムも影響していて、そういえば最近、このあたりの傾向が変わっているような気がする。

ザ・メニュー

Disney+で『ザ・メニュー』を観る。孤島のレストランで供される絶品の料理を味わうために集った上流階級の面々が、コースが進むにつれ奇妙な違和感に直面することになる。孤島のサバイバルものと思いきや、サスペンスはほぼ店の中で終始する密室劇で、異様な論理と秩序のもとで物語は進む。いわゆるハイソな人々を倒置して酷い目に遭わせるあたりは予想の通り。

107分の尺でちょどよい印象の脚本には、しかし妙な説得力があって、レイフ=ファインズが演じるシェフの狂気にもうかうかと納得してしまう感じ。その厨房のチームの存在感ときたら、アニャ=テイラー・ジョイに並ぶくらい。まったく違う話ではあるけれど、『サマータイム』を思い出したものである。

南海トラフ巨大地震

NHKスペシャルのドラマ『南海トラフ巨大地震』の前半を観る。来るべき大地震を題材にしたシミュレーションドラマ。地震の到来まで、やけに辛気臭いドラマが続いて視聴者を振り落としていくスタイルで、役者は揃っているけれど紋切り型の設定であるのは、いかにもNHKスペシャルという感じ。『青天を衝け』に出ていた仁村紗和が出演している。そしてNHKはなぜ東大阪のバネ工場をたびたび舞台とするのか。

NHKはこのタイミングで「半割れ」という想定をキーワードとしていこうという様子だけれど、南海地震と東南海地震の連動を啓蒙するためには、なかなかいいアイディアだと思う。宝永地震のような「全割れ」のシナリオでは、時間差による減災のシナリオなど成り立たないからには。ドラマにおいては、本震の発生から四国太平洋岸への津波の到来にそれなりの時間的な猶予があるように描かれていたが、ここにも逃げるだけ無駄という筋書きにするわけにいかない事情が透ける。「最悪のシナリオにどう備えるか」というトーク番組も控えているようだけれど、最悪にもかなりの幅があると思うのである。