強行

この日、健康保険証の廃止を盛り込んだマイナンバーの関連法が特別委員会で可決され、今週中にも本会議で成立する見通しとなる。国民皆保険の後退となる事実上の申請制への移行である。かくのごとくして、国家の専横は国民の安寧と自由を奪いながら増長を続ける。そもそもシステムの致命的な瑕疵が何重にも明らかになるなかでの、この横暴である。

同じく、原子力発電所を60年を超えて運転できるようにする法案が可決され、この国の斜陽にとどめをさす。この巨大技術の運用を担うに十分なだけの人材は現場に残らず、数多の微小事故の果て、取り返しのつかない原子力災害を再発することになるだろう。

AIプロパティ

このところNotionを使っている。あまりにもメジャーなツールだが、何しろ多機能なので使い方もそれぞれだろうけど、気兼ねなくファイルをアップロードしたいがために課金し、使いどころがあまりないNotion AIまで、なぜかサブスクしている。ChatGPTも有料コースなので、生成系のAIに月30ドル近く金を払っているAI元年。

そのNotion AIが、最近データベースのプロパティに使えるようになったのでクリップしたWebページの要約を生成するために使ってみている。記事からキーワードの抽出をする項目も設定できて、アウトプットの精度を8割程度でよしとすれば、だいたい役に立っている感じ。このあたりのユースケースが王道というものではなかろうか。

アストリッドとラファエル

『アストリッドとラファエル 文書係の事件簿』のパイロットを観る。先頃、NHKではシーズン2のオンエアが始まったらしいけれど、本国のフランスでは第3シーズンまで放映済みで、第4シーズンの制作も決まっているとか。BBCのドラマのようにきっちりした作りで、どこか『SHERLOCK』を思わせる雰囲気がある。高機能自閉症のアストリッドがパリ警視庁の警視ラファエルと事件を解決していく。導入はまずまずだし、少し無理はあっても面白いエピソードになっている。悪くない。

この日、北朝鮮の衛星発射通告に対して本邦の政府は、やや度を越したとも見える反応を見せる。秘書官を務める首相の息子のスキャンダルが話題となっている状況を踏まえれば、他国の意図よりも、どうしたって自国政府の思惑が気にかかるというものである。

決戦は日曜日

『決戦は日曜日』を観る。窪田正孝が代議士の秘書、宮沢りえが病気の父親の代わりに国政選挙に担ぎ出された娘を演じる。昔ながらの事務所体制に、エキセントリックな感じで登場する宮沢りえの存在感が面白くて、その個性で引っ張るコメディかと思いきや、個人の意図など超えて構築された利権構造が顔を覗かせる。欲得の異常な関係に最適化された陣営のそれぞれの役割がきっちり描かれているあたりが見どころで、デフォルメされているとしてもほとんど現実の姿に近いのではなかろうか。

こんなまずいことになっているのに、よく平気でいられるよね。何もしないで

窪田正孝と宮沢りえが、真人間となって落選活動を開始する後半、維新みたいな選挙を始めて炎上し、コアな層に気に入られてしまう展開は面白いのだが、もちろんすぐ真顔にならざるを得ない訳である。低い投票率なら組織票でいけるという、小市慢太郎演じるベテラン秘書濱口の総括は、どうすればよいかを示唆はしているのだが。

風刺の効いたウェルメイドなコメディである。窪田正孝の映画にハズレなしという経験則は維持されていて、捉えどころのない感じのキャラクターをよく演じている。

黒い海

伊澤里江『黒い海 船は突然、深海へ消えた』を読む。2023年の大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した本作は、2008年に起きた不可解な漁船の沈没事故と、生き残りの乗組員の証言と矛盾する事故報告書をまとめた運輸安全委員会の動きに取材して、事件の真相に迫ろうとする。

海の『エルピス』の評もある内容は非常にスリリングで、その後の東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故によっても大きく人生の航路を狂わされた人々の証言を記録に留めようとする筆者の志は気高い。一方で、通底する国家の不作為と官僚機構の事実への冷淡さはディストピア小説に登場する類型のようで、しかし実際であろうだけに愕然とするのである。概ね1年をめどに提出されるべき事故報告書が、3年後、東日本大震災のひと月あと、当事者が大混乱にあるそのさなかに出されたという事実ひとつがさまざまなことを物語るが、掘り起こされた文脈が炙り出していくのはひとつの推定事実で、たしかにその蓋然性は高いように思われる。

この国における事実の軽視は、さきの戦前と同じ状況にあるようだ。現実に対しては素人でしかない行政官が、繁殖の過程で無責任な政治と結託した結果、優秀な官僚機構という幻想は過去のものとなった。黒塗りの開示文書は政治の圧力によるものというより、責任回避のための自主的な役人仕草であるというのは、もとより想像に難くなく、この国はいよいよ「張り子のリヴァイアサン」と化して、事実は自由とともに扼殺される運命にある。

Ctrl + Space

MicrosoftがWindowsの痒いところに手が届くツールとして提供しているPowerToysは、これなしにはどうしたらいいかわからない優秀な機能補完アプリで、特にPowerToys Runは、RaycastのないWindowsにあって四六時中、使っている不可欠なものといえる。

最新のバージョンはv0.70.0で、何ならまだPreviewという表記がついているので新しいユーティリティが時々、追加されてこれも楽しみ。だがしかし、であるがゆえに落とし穴もあって、直近ではアップデート後にCtrl + Spaceで日本語入力のモード切り替えができなくなって往生する。プレビューという便利機能が新たに追加されたのだが、アクティブ化のショートカットが被っていて、こちらがオーバーライドしてしまっていたようなのである。もちろん、別の割り当てをすれば解消するのだけれど、右往左往してしまう。

定点観測

いわゆる5類移行からこっち、COVID-19の状況は目論見通り不可視化されて、週ごとの定点観測がわずかなよすがという感じだけれど、週の数字が積み重なるや倍加傾向ということでは、あっという間に蔓延して以降はこの運動が3ヶ月ごとに繰り返されるということであろう。集団としての免疫系は徐々に損傷を受けて他の感染症のエピデミックも起きるというのが、パンデミック時代の常態ということになる。