線は、僕を描く

この日、アメリカでファーストリパブリックバンクが破綻して公的管理下におかれる。資産はJPモルガン・チェース銀行に売却されるということだけれど、この規模の経営破綻を何ごともなかったかのようにやり過ごせるかといえば無論、そんなことはないであろう。

『線は、僕を描く』を観る。水墨画を題材にした同名小説の原作による小泉徳宏監督の映画で、主人公を横浜流星が演じている。何かと尖った役回りが多い気がするけれど、家族を失ったトラウマを持つ物静かな主人公を演じて違和感を感じさせない。意外と器量の大きな役者だと思うのである。清原果耶は安定の清原果耶で、それはそれで、もちろんいい。

『ちはやふる』の百人一首と同様、素材としての水墨画には、ほとんどの観客にあまり馴染みがないと思うのだが、一期一会の儚さと、つまるところ己が内面の表現であるということが何となく了解される話の運びはさすが。とはいえ、やたらとライブパフォーマンスを行なっている印象が、実際にもそうであるのかは、よくわからない。もしかしたら非常に異なる理解をしているのではないかという気がしなくもない。