355

『355』を観る。南米の麻薬カルテルが開発した、あらゆるものをハッキングできるというデバイスという冒頭から感じる嫌な予感は、続く10分で確信に変わることになる。

ジェシカ=チャステインが今さら、どうしてこのような陳腐な設定の映画に出るのかと思えば、企画そのものが彼女のアイディアだという話である。冒頭から迂闊にも荷物を奪われた挙句に銃を振り回すエージェントが、まともなスパイスリラーの主役をはれる気がしないし、そんな調子で第3次世界大戦を語るというのはどうなのか。

かつて『スピード2』という映画があったけれど、主演俳優が作品そのものに口を出すとロクなことにならないという新たな事例のようである。徹頭徹尾、やたらと銃をぶっ放す安い脚本で、撮影もテレビシリーズみたい。このキャスティングを実現しながら、全てを無駄に使うとは。本来なら80分の内容だが、122分の尺というのも罪作りなことである。