頻回

能登で大きな地震があってから24時間内に観測された地震は1,000回近くになったそうである。東日本大震災の余震が一週間で700回程度だったという話からすれば、何かよくわからないメカニズムが働いているということであろう。この日まで、有感地震もまだまだ続いているのである。

そういえば5日に大きな地震があったとき、緊急地震速報は発報したけれど当地では何も異変を感じず、半島との間にあるというフォッサマグナの不思議な作用かと思ったのだけれど、プレートの規模からすると歪みの影響は思わぬところに蓄積されているに違いない。

第弐位相

伊藤計劃が亡くなってからもう15年近く経つと思えば愕然とせざるを得ないが、はてなブログに残っているブログ「第弐位相」は今でも時々、目を通すことがある。テンプレートの更新で微妙に見た目が変わったりするのだけれど、このデジタルデータが今も残って、コメントを書き込む読者がいることには何がしかの意味があると思う。

Twitterでは30日ログインのない休眠アカウントを削除するという話がまたぞろ出てきて、イーロン=マスクの乱心は今さら驚きもしないけれど、媒体としての価値を自ら毀損する継続的な取り組みには、むしろ感心する。かつて記された数多の短信の消滅によって得られるものは何か。

岐路

COVID-19の5類移行初日、長野県では入院患者が300人、500人を超えたところで独自の医療警報を出すという方針が示される。今さら注意喚起をしても手遅れというものだが、このあたりの覆い隠しようのない数字と、著名人の訃報をよすがに、事態の動静を知る新たな段階にすすむことになる。

一方、首相官邸の記者会見に導入されてきた人数制限は、特に理由を示すことなく継続されるという話である。結局のところ、全てが恣意的な運用であり、同時に本邦のジャーナリズムは徹底的にコケにされ、それに抗することもできないのである。誰もが恥を知るべきであろう。

355

『355』を観る。南米の麻薬カルテルが開発した、あらゆるものをハッキングできるというデバイスという冒頭から感じる嫌な予感は、続く10分で確信に変わることになる。

ジェシカ=チャステインが今さら、どうしてこのような陳腐な設定の映画に出るのかと思えば、企画そのものが彼女のアイディアだという話である。冒頭から迂闊にも荷物を奪われた挙句に銃を振り回すエージェントが、まともなスパイスリラーの主役をはれる気がしないし、そんな調子で第3次世界大戦を語るというのはどうなのか。

かつて『スピード2』という映画があったけれど、主演俳優が作品そのものに口を出すとロクなことにならないという新たな事例のようである。徹頭徹尾、やたらと銃をぶっ放す安い脚本で、撮影もテレビシリーズみたい。このキャスティングを実現しながら、全てを無駄に使うとは。本来なら80分の内容だが、122分の尺というのも罪作りなことである。

終了

この前日、WHOは専門家会合の勧告にもとづいて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」宣言を終了する。これは各国ですすむ緩和の動きを追認するものだが、同時に「どの国でも起こり得る最悪な事態は、今回の知らせを理由に警戒を緩め、構築したシステムを解体、あるいは国民にCOVID-19を心配する必要はないというメッセージを発信することだ」とテドロス事務局長が釘を刺した通りのことが、この国でも起きつつある。まず、この連休明けは酷いことになるはずだが、その事態の全貌が把握されることは既にないのである。

鎮圧

件の山火事については、朝7時前に鎮圧の連絡放送が流れる。この地では区内放送という設備があって、行政の連絡が拡声器を通じて一帯に流れるようになっている。火災の「鎮圧」という聞き慣れない表現は、鎮火に至る前段階を指すということらしい。それに先立つ早朝、霧ケ峰高原上空を自衛隊のヘリが飛行し、諏訪湖から採取した水を散布する様子を目撃する。火事は山頂付近の草原を焼き払い、しかし建物などの被害はなかったということである。

この日の午後、久しぶりに緊急地震速報が鳴り響き、能登半島を震源とするM6.5の地震が発生する。震度にして6強の揺れは久しくなかったもので、この数年続く能登の地震でも最大のものとなる。見附島では外周の崖が少し崩れたようだが、あの特徴的な地形がこのような地殻変動の結果として形成されたと考えれば妙に得心がいくというものである。付近ではその後もやや小さめの地震が頻発している。

奈落のマイホーム

『奈落のマイホーム』を観る。2021年の韓国製のパニック映画で、本国ではそれなりにヒットしたらしい。念願のマイホームを購入し、真新しいマンションに引っ越した直後の家族が施工不良の疑念を抱くのも束の間、突然にマンションは直下の大きな穴の中に沈み込む。それが沈下というようなものでなく、500メートルを垂直方向に落下するという話だから、よく考えるまでもなく荒唐無稽な話なのである。なんだこれ。

後半は韓国映画に一ジャンルを形成する典型的なサバイバルものの展開で、つまりもともとそういう映画だから、文句をつけるようなものでもないとして。主人公の家族と因縁をもつ得体の知れない男をチャ=スンウォンが演じていて、このあたりの設定がコメディ要素に効いて、考証はともかく脚本の出来はそれほど悪くない感じ。

ゴールデンウィーク中盤のこの日、日もそろそろ暮れようかというタイミングで携帯の緊急速報が山火事の発生による避難指示を伝える。霧ヶ峰で起きた下草火災が延焼して、付近の別荘地にも危険が迫っているという話のようである。10年前にも山焼きが燃え広がり大きな火災になっているのだが、ほとんど同じ様子で夜の闇の中、山頂付近に広がる炎の円環が見える。