中断

昨夜、ローカルニュースで伝えられた死亡事故のニュースは、在住のヨーロッパ人会社員が何らかの理由で車線をはみ出して対向車線の軽トラックにぶつかったらしいとの推測が添えられていて、最果ての国で取り返しのつかない事態に立ち入った経緯の、道のりの長さそのものに何かしら不思議なものを感じたのでよく覚えていた。

その出来事で、ぶつかられて亡くなったのが、見知った人であることを翌る日に知って衝撃を受けている。不思議な人生航路の長い軌跡がどのように描かれるかを知ることはできず、それどころか、それが交点をつくったことにさえ気づかず、ほとんどの場合、私はただ通り過ぎて行く。

悪鬼

『悪鬼』の第12話を観る。因習を煮詰めたような過去がもたらす惨劇を描いた話であれば、ハッピーエンドなど望むべくもないと知れているのだが、キム=テリの演技には全てを見届けなければいけないと思わせる何かがある。思えば『二十五、二十一』にも、そんなところがあったような気がする。演技派なのである。話の方は、怨霊的な謎解きと開けてはならぬ禁忌で引っ張る感じではあったけれど、全体としてよく構成されていて、刑事を演じたホン=ギョンも格好いい。よくもあり、悪くもあるラストシーンの味付けは絶妙。

列島を覆った高気圧の影響で引き続き暑い日が続いている。雨が降らなければ地面に熱が籠り、降れば湿度が上昇する二者択一。一方、その高気圧が押し出す形で台風5号の直撃を受けた中国の沿岸は大洪水に見舞われ、続く6号も同じようなコースを辿ってなおも接近中にある。

ドリーム

『ドリーム』を観る。ハンガリーで行われるミニサッカーの福祉大会に出場しようというホームレスのチームを指導することになったサッカー選手が、変わり者揃いのチームを嫌々、指導するうち、自身にとっての意義を見出していく。パク=ソジュンが主演の韓国映画。

世知辛い世の中、欲得ずくで取り組み始めた仕事が、それぞれの事情を知るうちかけがえのないものとなっていくという、よくある人情劇ではあるけれど、脚本のメッセージは明確なセリフとして、あなた自身が路頭に迷うことにはならないと言えるのか、倒れたものを支え合って、皆でプレーするのが社会ではないかと訴える。この率直さには何がしかの意味があると思う。

沸騰

地球温暖化はそのティッピングポイントを越えて地球沸騰化に向かうと国連事務総長が警告する。沸騰という言葉には、状態の位相が変わったという含意があり、単により強い言葉を選んだということではない。この7月は史上最も暑い7月となったが、これから先、最も涼しい7月だったということになる可能性は極めて高い。これから先は、あらゆる気象的な事象が極端化する。社会の仕組みがその激変に適応することは難しく、収奪と諍いと暴力が台頭してくることもまた、間違いあるまい。

この日、日銀による金利政策の上限目標が変更される。政策としての持続可能性の是非はともかく、理由となったインフレの傾向は明らかに供給からのプッシュ型であり、円安がそれを増幅して国内の困窮の度合いはさらに強まる。単に金銭の話を超えて食糧自給が問題として認識される未来すら、そう遠くないかも知れない。

課題図書

久しぶりに研修に参加することになっていて、その事前課題が届く。昔の研修で読んだような書籍ばかりで、本邦の経営理論の進歩が心配になるような気がしなくもないけれど、夏の日、在宅勤務のひとときに宿題を眺めていると、何だか夏休みの感覚を思い出して、ひとつ何事かを成し遂げなければならんなという気になる。いや、気分だけ。

この日、長野県は夏休みのコロナ感染拡大について注意喚起を行ったようだけれど、何しろ調べないから様子がわからないという状況で、不可視のウイルスの何を注意しろというのか。

権利

そごう・西武の労働組合がスト権を確立したというニュースが報じられ、この当たり前の動きはしかし、この種のシステムがまともに動作しているのを久しぶりに見たという感慨を呼び起こす。この、あらゆる当たり前が壊れつつある国で。

しかし、これを伝えるニュースが「イメージの悪化を心配する声」などと、あまりにも労働者の権利を蔑ろにするスタンスで語ろうというのである。ハリウッドのストライキも同じ扱いだったことを考えれば、無責任に一貫しているとはいえ。こうした報道姿勢が、この国をどれだけ駄目にしてきたか、その悪影響は計り知れず、これを反省する動きすらないようである。

そのXは黒抜きに白のfaviconで、厨二的としか言いようのないその意匠を見物に行く。x.comでリダイレクトされるので、ドメインを替えるという話も本当らしいけれど、これがいいという意見が想像できないだけに、まぁ、ある意味で大したものである。