X

TwitterのロゴがXのロゴになるそうだ。このサービスも、終わりが始まってから何度もイベントが発生して、転落しながら爆発炎上する事故みたいな感じになっているけれど、奈落は確実に近づいているであろう。黄金比で象られた小鳥のロゴは、なるほど考えられたバランスだと感心したものだが、Xについて言えば、どう見てもトヨタのマークXのエンブレムである。考えるだけ無駄というのはわかっているけれど、意味がわからん。

『生まれ変わってもよろしく』の最終話、第12回を観る。このドラマでシン=ヘソンという女優を知ったのは大きな収穫で、その表情の演技の繊細さでは、キム=テリかシン=ヘソンかという脳内順序を競っている。通常よりも短めのシリーズ構成だけれど、ほとんどのエピソードを綺麗に回収し、終盤に反転の構図を持ち込んで形よく収め、設定をよく踏まえた満足感のある結末になっている。こうなってくると、もう一周くらいしてもいいのではないかという気さえなくはない。

松本

渡世の用事で松本へ。午後になれば気温は30度という日だけれど、重装備のスーツを着込まなければいけない事情というのも、あるわけである。『マスター・キートン』か『VIVANT』かという感じでアスファルトの照り返しを歩く。松本城の周辺は、いつの間にか再開発がされていて、なんだかだいぶ景色が変わっているところもあるみたい。インバウンドで生きて行くことを決めた勢いでゼネコンの口車にのってしまった雰囲気があるけれど、100年の風雪に耐えうる文化的な奥行きがあるのかは、まだわからない。とにかく暑いので、夏は死ぬということは明らかだとして。

『どうする家康』は本能寺の顛末があって、次週はいよいよ伊賀越えという時間帯。定説を大きく逸脱せずに、どのように語るかという解釈への興味で観ることができる展開が続いていて、この頃の『家康』はだいぶ面白くなっている。

海洋熱波

この日、目にした北大西洋の海水温のグラフは、これまでその恒常性によって温暖化がもたらす位相転移を食い止めてきた海洋が、ついに限界点を超えたことを予感させる異常な上昇を示していて、そのことに震撼する。世界の平均気温が観測史上の最高を記録し、各地が恐るべき熱波に襲われていることと符合しているのだが、それでも、数ヶ月前に始まったエルニーニョ現象は現在の状態にまだそれほどの影響を及ぼしていないというのである。

熱波そのものが農作物を枯死させ、海洋からのエネルギーの放出は必然的に巨大なハリケーンをもたらし農業は大規模な打撃を受ける。ウクライナでの戦争よりも、食糧生産は気候変動によって大きく落ち込むことになる。この先、どれほどの余地があるのかは判然としないものの、この文明にあらかじめ警告された命数はほとんど遣い込んでしまったのではなかろうか。

超予測力

『超予測力』を読む。これもハヤカワのNFで、ちょっと煽りの入ったタイトルではあるけれど、問題を分解して手に負えない事柄は扱わず、実績の評価をしながら予測を行う科学的な手法の有効性と限界を説いた内容で全く常識的。その教義に至るまでの前振りが長くて、ちょっと笑ってしまう。読み物としての体裁をよく心得ているのである。それも含めて十分、面白いし、この不確かな世界を生きていくのに、科学の方法のなんと心強いことか。

この日、官房長官は記者会見で新型コロナウイルスの感染拡大に先手で対応すると述べたという。これほどの厚顔であれば、国土が焦土と化してなお、大勝利を宣言することさえするだろうが、収奪的な政府が試みているのは国民から言葉を奪い、無力感を植え付けることなのである。

あなたの知らない脳

『あなたの知らない脳』を読む。ハヤカワ・ノンフィクション文庫は好きである。ラマチャンドランの『脳のなかの幽霊』から時を経て、受動意識仮説の世界観はさらに深まっている印象。人体のサブシステムを統合するのが脳であり、意識はその一部に過ぎないというのは今や疑うところのない話だろうし、一方で還元主義的な立場を拒否する著者の主張はよいバランスにあると思える。面白い。

災害において無策で、あらゆる機会をとらえて中抜きの金を落とすこの国の政府の最近のテーマは増税で、さすがにこの収奪的な政府がまともに機能するなどとは期待するほうがおかしい。再分配の機能を正常化するという一点で、次の選挙は戦われるべきだろう。

ハヤブサ消防団

『ハヤブサ消防団』を観る。このクールの地上波ドラマらしいけれど、中村倫也が結構好きだし、それが書けない小説家というライターズブロックものの設定も好み。地方の共同体を濃縮したような消防団を舞台にして、そこに曲者揃いのキャスティングを実現しているのも面白い。実を言って、岡部たかしが出ているので、ちょっと観てみようと思ったのである。このところ売れている一ノ瀬ワタルまで顔を出しており、制作にも力が入っていると思ったら、原作は売れっ子の池井戸潤らしい。キャラを立てるのが上手な物語を作るので、映像化がひきも切らないというところがあるのだろうし、それをよく理解している感じ。

今日のウェブトゥーン

『今日のウェブトゥーン』を観る。本邦の『重版出来』を原作とした韓国ドラマ。ウェブ漫画の編集部に舞台を移し、しかしオリジナルのエッセンスはきちんと盛り込んだ実写化で、韓流の風味もしっかり効いていたバランスのいい作り。日本でのドラマ化もよかったけれど、ちゃんと面白くなってくるのは、原作の話がよくできている点も大きかろう。エピソードはほぼ踏襲されている感じだけれど、父権と家族がしっかり顔を覗かせるのが興味深い。文化的にあらまほしいバランスというのがあるようである。