すずめの戸締り

『すずめの戸締り』を観る。ちょっとした予告映像のほかは全く情報を仕入れていなかったので、いまさらであってもかなり新鮮に楽しむことができたのである。かなり正統派のロードムービーで、そういうのは基本的に好きである。話の方もかなりシンプルで、象徴は作法に従って分かりやすく扱われ、例によって背景は実存を前提としてあくまで美しく、現実と記憶がやにわに顔を出して奥深いところに打撃を加えるあたりには、いわゆる作家性が垣間見えて興味深い。緊急地震速報というものが2010年代以降、凶兆の新しい表現になったということには、なかなか深い意味があると思ったことである。