今年はあまり映画を観ていなかったような気がするのだけれど、振り返ってみるとそれなりの収穫はあって、『ヘルドックス』は終始、興奮してそのかっこよさを讃え、見逃していた原田眞人監督の映画作品を追いかけたものである。ただし、同じ岡田准一主演の『最後まで行く』をまだ観ていないツメの甘さには2023年という年を象徴するようなところがある。
韓国ドラマでは『生まれ変わってもよろしく』が筆頭で、『梨泰院クラス』で徹底的に悪役だったアン=ボヒョンのイメージを塗り変えたし、何よりシン=ヘソンの演技プランの奥行きに感心してすっかりファンになったものである。いかにもWebマンガが原作という雰囲気の話ではあるけれど、ストーリーそのものも結構、面白かったのである。
台湾の映画も幾つか観て、特に『1秒先の彼女』は非常に楽しんだ。宮藤官九郎の脚本で男女を入れ替えたリメイクの『1秒先の彼』も観たけれど、これはオリジナルのバイタリティの方が合っていたような気がする。
邦画では『水は海に向かって流れる』が印象に残った。原作の漫画とはエンディングの処理が大きく異なり、広瀬すずの存在感をうまく引き出した映画らしい演出になっていた。その後の行方が気になる向きは原作を確認せざるを得ないという趣向だが、これは原作も面白いので是非、読むべきだと思う。
そして『ゴジラ -1.0』も予想以上によく出来ていて、モノクロバージョンの『ゴジラ -1.0/C』もどこかで観てみたいと思っている。そもそも「マイナスワン」というのがよくわからないと思っていたのだけれど、「マイナスワン、マイナスカラー」というところまで来れば、そういうものかという気にもなってくる。
ゴジラの世界展開は続いており、モンスターユニバースでは『モナーク:レガシー・オブ・モンスターズ』の最新話を毎週、楽しみにしていて、こちらは年を跨いで、おそらくはあと2話程度でシーズン1完結となる。例の地下世界が顔を覗かせてきているので、世界観の奥行きをキープできるかが今後の面白さを左右することになるであろう。
『窓際のスパイ』は第3シーズンにかけて尻上がりに面白くなってきている感じで、原作もいまだに最新作が最高傑作と言われているようだから、なかなか幸せな作品なのである。ドラマのほうも今期が一番の出来とみえ、今から第4シーズンが楽しみ。
日本のドラマでは上田誠の『時をかけるな、恋人たち』とバカリズムの『ブラッシュアップライフ』を挙げておく。とはいえ、脚本の妙だけでなく、いずれも役者の仕事のレベルは高く、特に安藤サクラのナレーションには中毒性すらあると思ったものである。
というわけで、今年もあと1日。あまりにドタバタしているので、振り返り企画もどうしようかと思ったのだけれど、継続は力なり。そして来年も多くの作品に感心することになると思う。