憲法記念日のこの日、上半期朝ドラの『虎に翼』では、帝人事件をモデルにひいて、主人公の父親が巻き込まれることになった疑獄事件の決着がつく。この経験を踏まえて主人公の寅子が言うには、法律とはきれいな水のようなものであって、私たちはこれを守っていかなければいけない、正しい場所に導かなければいけない。

法律は武器、いや盾という二項対立に加えてこの第三の見解が示され、司法の概念に同期して物語の進路が明らかになる手際も鮮やかだけれど、この台詞が憲法記念日に同期して盛り込まれるというのがまた、全体の完成度の高さを確信させる企みでしびれる。

アーキタイプ

『両京十五日』を読み終える。いわゆる英雄の旅と西遊記を構成する物語要素に、陰謀と裏切りを加えて上等に煮込んだストーリーは結末まで隙間のない盛り上がりで実に面白かったのである。ことに敵役がその立場を替えながら物語の進行に果たす役割のかっこよさにはしびれる。読中、本邦なら浅田次郎といったあたりの手になる、特に出来のよい小説を思い起こさせる雰囲気があって、大河のような創作の繋がりはさまざまな枝をつくっていると感じたものである。

連休の合間のこの日、市場介入と思われる相場の急激な動きによって円はいったん153円の水準に戻すが、そもそも薄商いの状況でやや空威張りという気がしなくもない。シグナルを強調する効果はあったとして、それも一時的なものであろう。

両京十五日

このところ馬伯庸『両京十五日』を読んでいる。現在、第2巻の半ば、全体では75%の進捗といったところ。この中国産の小説は、明を舞台とした長大な冒険小説で何しろ滅法、面白いのでページを捲る手が止まらない。北京、南京を結ぶ運河を舞台に、王朝転覆の企みを躱し、それぞれの思惑を抱える一行が皇太子を助けながら時間制限のある決死行を展開する筋書きは、正しく明朝版の『深夜プラス1』といった感じ。因縁と呼ぶに相応しく入り組んだ設定が物語の奥行きを作り、定型と期待を外さない作法の良さもあって中華小説の完成度の高さに感心している。