『パシフィック・リム』を観る。
かつて『パトレイバー』を演出した押井守は、レイバーを「動かさない」ことに腐心したというが、そもそも作画が破綻するなどという心配は一切することなく本作では冒頭から巨兵イェーガーがブンブン動いて、しかも最後まで出し惜しみということが一切ない。そしてレイバーが動かないことによってその物理的なリアリティを維持しようとしていたのに呼応する文脈で、そもそも自重で潰れそうな巨大ロボットが格闘を続ける無茶は無論あって、つまりリアリティというものは画面に現出する質感にしか存在せず、物理的整合とは無縁で、全長80メートルのロボットがヘリで輸送できるのかとか、それぞれのシーンでは疑問が渦巻くこともあるのだけれど、そもそも怪獣映画とはその荒唐無稽を出自にしていたのだから、これはこれでよろしいのではなかろうか。話の方はどこかに似たようなのがあったと思ったら『バトルシップ』がそうだったけれど、もともと古来の作法に則った展開でこの点についても特に文句をいうつもりはない。
本邦の菊池凛子がヒロイン、芦田愛菜がその子供時代を演じているが、怪獣襲来の恐怖に慄く子役は廃墟となった東京を舞台に一人芝居を演じ切っており、そもそも撮影上は合成された画面もない上での演技だったろうことを考えると立派な役者の仕事となっていて感心しきり。
ギレルモ=デル・トロがこういう趣味のひとだとは知らなかったけれど、微妙に欧化された妄想によって怪獣文化の多様性はまた一段、奥行きを得た。素晴らしい。