『ザ・マスター』を観る。ホアキン=フェニックスが『I’m still here』の後、初めて主演した映画だけれど、引き続き人生に迷い破滅型の生き方を続けている様子で痛々しい。演技だけには見えないのである。
この映画の題材を巡ってはサイエントロジーとの類似が指摘されており、主宰者をフィリップ=シーモア・ホフマンに演じさせているだけでも十分に批判的ではあるわけだが、胡散臭さには真実味があってちょっと勉強になる。監督のポール=トーマス・アンダーソンの語り口は『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』のときとよく似た感じであり、象徴的なところでちょっとテレンス=マリックを思い出したけれど、内面が語られることがない点が大きく異なる。決して空疎ではない138分だけれど、何かが腑に落ちるということもまたないのではあるまいか。