『フィフス・エステート』を観る。ジュリアン=アサンジ自身が製作に反対していたジュリアン=アサンジとウィキリークスの自伝的映画で、ベネディクト=カンバーバッチがアサンジを演じている。興行的にはかなり不調だったうえ、本邦では未公開だったようだけれど、それなりに手がかかって、たぶん『ソーシャル・ネットワーク』の路線を狙ったのであろう。
カンバーバッチはアサンジに見えなくもないけれど、人物がどうであるかはよく分からない。『第五権力』と大層なタイトルがついているし、オープニングタイトルからして新たなメディアの台頭をいわんばかりではあるものの、アフガン文書の公開をめぐる葛藤をクライマックスとして、行きがけの駄賃にアサンジその人の人格に負のバイアスをかける描き方をしているのは間違いない。時系列では続くはずの暴露事案が割愛されて、一連の出来事が終わったかのように描かれているのもどうなのか。何より、カンバーバッチが演じるアサンジに映画化について否定的なコメントを吐かせる結末は当人を二重にコケにしたもので、製作意図はかなり悪質といってよいのではあるまいか。