『ハドソン川の奇跡』を観る。ラガーディア空港を離陸した直後、深刻なバードストライクで両エンジンを喪失したA320がハドソン川に不時着水し、しかし乗客乗員全員が生還した事故の顛末を扱っている。比較的に新しい2009年の出来事だけれど、クリント=イーストウッドが監督してトム=ハンクスが主演となれば、事実そのものもだいたいこの内容に置き換わっていくのではあるまいか。96分の尺で比較的、小品ではあるけれど、状況を生真面目に再現しており、公聴会のシーンでは実際の争点を踏まえながら多少、劇的な場面もあって、娯楽作品としてもよく出来た映画になっている。
トム=ハンクスは選外であったにもかかわらず本作でアカデミー賞の候補者リストに名前が出てしまった手違いが報じられたばかり。当人としては水準の演技なので候補になってもおかしくないと思うけれど、唯一ノミネートされている音響を含めて、傑出しているという印象ではなく、事実というのも物語には厄介なものである。
トム=ハンクス演じる機長は飛行歴42年という大ベテランだけれど、回想ではF4ファントムでの緊急着陸シーンがあって、月に向かって飛ぶ双発のエンジンのカットがとてつもなくカッコよく、だいたいこれだけでも満足で、このシークエンスを押し込んだ監督を讃えたい。