『ゼイ・シャル・ノット・グロウ・オールド』を観る。公開時は『彼らは生きていた』という邦題がついていたと思うけれど、”They shall not grow old”の方が内容を示している点で優れた時制であるには違いない。
ピーター=ジャクソンがLondon’s Imperial War Museumで保管されていた第1次世界大戦の西部戦線における600時間の未公開フッテージと200人以上の元兵士へのインタビューをもとに再構成したドキュメンタリーで、モノクロの映像を着色することで、往時を現在に引き寄せることに成功している。AI処理に固有のディテールの不自然さが全体の画面としては成立しているのは興味深い。若者が軍の募集に応えて西部戦線に送られ激戦に身を置いてやがて終戦とともに帰郷するまでを、インタビュー音声を重ねて再構成しており、リマスターされた音声と画面のシンクロもよく練られていて完成度は高い。何より、再処理されているとはいえ基本的には粗い情報を文脈的に再配置することで、群衆が身体と精神を破壊された兵士たちに変容していく過程を克明に伝えることに成功していて、監督の意図は完全に達成されている。