ここしばらく、日本のCOVID-19は制圧されたかのような雰囲気で様々な巻き返しが始まったところに、B.1.1.529変異株のニュースである。これまで勢力を拡大したアルファ、ベータ、デルタの変異の特徴を全てもち、直近の勝者であるデルタを圧倒していると聞くともとよりラスボス感が強いのだが、感染拡大ペースの比較グラフを見たところでは立ち上がりが時間軸方向に大幅に圧縮されており、これまでとは印象の異なる指数曲線になっていて慄いている。オランダのスキポール空港では南アフリカからの航空機2機に乗っていた600人のうち61人からコロナ陽性反応が出たというニュースがあって、各国の検疫が急速に強化されているのは学習の成果だとしても、時すでに遅しという感じもまた。
どのような症状が出るのかという情報も十分にない状況ではあるものの、感染拡大が続く限り変異は継続し、拡大する力のある株を蠱毒のように生み出すことになるということを改めて示したというわけである。モデルナは100日以内に対応するmRNAワクチンを開発可能であるとしていて、人類が新たに手にしたこの技術の凄さも確かではあるけれど、実際にはウイルスの拡大と変異の速度に太刀打ちできるスピードとも思えない。この惨禍の出口は、やはり見通せていないのが現在位置ということであろう。