引っ越し

娘夫婦の引っ越しの手伝いで横浜まで。手伝いといっても二匹いる猫たちのお世話で、我々は一体どうなってしまうのかと毛布に顔を埋め現実否認の状態にある箱入り息子たちの輸送が主なミッションとなる。猫は家につくというが、新居にとうとう慣れるまで頑固な警戒モードが続くであろう。子猫の時に新幹線にも乗ったことがある貫禄はまるで窺えないのだけれど、成長が警戒心をもたらすのは、どのような機序によるものなのだろうか。

移動の車中で『職業としての小説家』をオーディオブックで聴いている。新作を熱心に追うことはないのだけれど、それなりに年季の入った村上春樹のファンである。題材からして、これまでにエッセイで書かれていた個人史的事件の内容が多く重なっているけれど、それらをよく知っているのは、つまりかつて読んでよく憶えているということで、そのこと自体が、象った文章の力を証明している。普通は忘れていると思うのである。

そして、表象文字を含む日本語の読書体験はオーディオだけだと、かなり異なる気がするのだけれど、著者の作品は案外フィットするのではなかろうか。オーディオブック化される小説作品も増えてきている様子なので聴いてみることにする。