戦争は女の顔をしていない

ウクライナが東部でロシア軍に苦戦していることを伝えるThe New York Timesの記事には、戦場に着くなりライフルを渡された100名の歩兵中隊が1日で30名の戦死者を出しているという衝撃的な内容があって、基礎的な戦術遂行能力と通信連携の不足、そもそも作戦の欠如を、本土防衛に向けた戦意で補ってしまうあたりが、スヴェトラーナ=アレクシエーヴィチの『戦争は女の顔をしていない』に書かれた往時のソ連軍の様子を想起させ辛い。あの本には、戦争がどういうものかも知らず、闇雲に前線へ向かおうとした若年女性の証言が幾つも載せられているが、ウクライナの大地で攻守を逆にして、これが再現されている気がしてならない。

そして、フランスのマクロン大統領がこの戦争が数ヶ月で終わるとは思わないと述べたというニュースが流れる。第2次世界大戦では火力優勢のドイツに対してソビエト連邦の犠牲者は2,600万人を上回ったが、ナチスドイツの打倒という戦争目標の達成なしに戦争の終結をみることがなかったことを考えると、膠着が最善手に見える現状の先行きはもちろん誰にも見通すことができない。