『哭悲 THE SADNESS』を観る。新型感染症が蔓延して久しい台湾で、どうやら変異したウイルスが人々を凶暴化させ社会機能は崩壊に向かう。市街地の狂乱をサバイバルするのが物語の眼目ということになるのだけれど、このゾンビが粘着質で、知能を保持しながら主人公を執念深く追いかけてくるあたりが目新しい趣向で、グロテスクなシーンには、ある種の独創性があると見えなくもない。監督はカナダ出身なのでこの残虐性がアジアに根付く何かというわけではないとして、商業的な成立には独自の目盛りが設定されているのであろう。全体としてそれほどお金がかかっているようには見えないけれど、何しろスプラッター描写に手を抜いたところがないので何だか見入ってしまう。そういう訳だから、解決とか勝利とか救出とか、生ぬるいドラマが介在する余地がないもむしろ美点ということになる。もちろんR18+で、新年早々という気分はあるとして。