エンパイア・オブ・ライト

『エンパイア・オブ・ライト』を観る。個人的には超絶技巧の映画職人というイメージのあるサム=メンデス監督が『1917』に続き、自ら脚本を書いた作品で、1980年代初頭、サッチャー政権の成立と時期を同じくして人種差別が激化したイギリスを舞台として、海辺の映画館エンパイア劇場で働くヒラリーと、職場に新たに加わった黒人の青年スティーヴンの人生の交錯が描かれる。

サム=メンデスの精密なレイアウトと、ロジャー=ディーキンスの撮影による画面は、光と影が構成する絵画のような美しさで、ほぼ全編にわたり破綻なく続く。この映像の完成度と、映画的に意図の明快な演出、主演のオリヴィア=コールマンの演技によって、さすがサム=メンデスという完成度の映画になっている。一方、あまりにも明快なメッセージは誤読の余地さえ排除したものとみえ、好みは別れるのではなかろうか。何しろ開巻、エンパイア劇場のホールの銘には「FIND WHERE LIGHT IN DARKNESS LIES」とあって、その時点で何だかいろいろ了解されるのである。