『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』を観る。A24制作でアカデミー賞の作品賞を受賞しているだけあって、ただのマルチバースものにあらず、まずあらゆる可能性の行き止まりのような人間関係を踏まえた話ではあるけれど、気合の入ったカンフーアクションが、これはこれで素晴らしい。もとはジャッキー=チェンにあて書きされたところがあるようなのだけれど、なるほどこのカンフーパートはそうしたものに違いない。
そして、ダニエル=クワン監督は湯浅政明らのアニメにインスパイアされたと話しているらしいけれど、それも腑に落ちる。アメリカ国税庁の垢抜けない事務所を主な舞台としていればこそ、映画の編集の力というのは多重世界をすら表現することができるのだと感心したのだが、それは日本のアニメが得意とする仕事でもある。とはいえ、ここで描かれている多様性は、アメリカであればこそ顕現したもので、本邦はその入り口にすら立っていない。