『宮廷画家ゴヤは見た』を観る。冗談のような邦題だが本作では目撃者の役割を振られているゴヤの位置づけを言い表してかなり適切なものである。ゴヤを演じているのはビル=ターナーことステラン=スカルスガルド。ナタリー=ポートマンが二役を熱演している。ハビエル=バルデムのロレンソ神父の変節ぶりとか、ヒロインの父である商人トマスの肚の括り方とか、とにかく見どころが多い。脚本もセンスを感じさせるもので、単なる変節に終わらないロレンソの末路を描く終盤から結末にかけての画作りは身震いするようなイメージであり、堪能した。例によって鉄環絞首刑が登場し、登場人物が皆、英語を喋っている不思議はあるにして、しっかりスペインなのである。秀作である。
エンドロールにはゴヤの諸作がバックに流れるが、ここにも登場する『巨人』は最近になってゴヤの筆ではないという見解が示されている。