『ウオッチメン』を観る。ファンタジーとしての階梯を縦横に行き来する物語、つまり、ほぼコスチュームプレイという所帯じみたヒーロー像とシュールな宇宙的存在を同列において重層的な構造を獲得した物語を、色の濃い達者な映像にしてあり、その分量は163分にも及ぶのでかなり見応えがある。デニーことジェフリー=ディーン・モーガンが出演しており、いきなり殺される役。空から降ってくる核の恐怖を背景とした物語には『アイアンマン』という傑作があるけれど、『ウオッチメン』は少し下った時代を舞台として諦観はさらに空虚に映る。80年代にありがちなニューエイジっぽさまで忠実に映像化してあるので、ちょっとタルいところもあるとはいえ、全体としては手が込んでいて希有な面白さのある映画に仕上がっている。