最近、ゼロ年代のベスト映画という投票企画を行っていたブログが複数あって、そのどちらでも『ダークナイト』と『グラン・トリノ』が1位、2位となっていたのだが、この結果には特に違和感もなく、世に具眼の士というのは多くいるものよな、と。最近の作品に偏っているという感じはあるにして、両者とも永く傑作・名作として記憶される作品であろうことは間違いない。
独自に3位を考えるとすれば一体、何を挙げるかという自問について、これはという一つを絞るのはかなり難しい作業である。趣味でいえば『エターナル・サンシャイン』『トゥモロー・ワールド』あたりが競っており、ゼロ年代という側面を重く見るのであれば、かなり毛色の異なる『ユナイテッド93』を入れてもいいような気もする。これは故 伊藤計劃氏が言うところの「司令室フェチ」にとっても重要な作品であった。ゼロ年代はあらゆる情報を映し出す装置が物語のなかでその存在感を高めた10年だったが、一方で現実の写しである『ユナイテッド93』は錯綜する情報に翻弄される司令室を舞台とすることで、そのアンチテーゼを提示しているとも読める。
などと考えているうちに、新しい007シリーズを押し込みたいような気にもなり、つまり一向に決めることができない。しかしながら、これらの作品が背負っている構造を抽象的に整理するとして、そうした内容を効率的にカバーできる作品があるとすればそれはスピルバーグの『宇宙戦争』であり、ここに至って評価は急上昇するわけだが、その観点では『ダークナイト』と被ってしまっているあたりが難であって、議論は振り出しに戻る。