BOY A

autumn『BOY A』を観る。イギリスでは本作を想起させる事件が過去に起きているが、幾らかインスパイアされたとして、どうやらそれを直接、題材としたものではない。何から何まで重いので、最後にはとても暗い気持ちになってしまう映画ではあるものの、主演のアンドリュー=ガーフィールドは社会復帰を目指す少年Aを演じて説得力があるし、慈父の如きソーシャルワーカーを演じるショーン=エヴァンスもかなりいい。展開は人間の弱さに立脚したもので嘘臭さがなく、さらに言えば伝統的な悲劇のモチーフに近代の家族の問題や社会的な不寛容を織り込んだもので、それだけに救いもなく、演出は手堅くて不穏な予感と悔恨に満ちている。物語の最後は海岸を象徴として用いた丁寧な描き方であり、そう言えば冒頭、主人公にプレゼントされるのはスニーカーであって、全体として構造とシンボルの配置は練られたものと言えるし、映像作品としてのクオリティはかなり高い。