『愛のむきだし 上』を観る。何故か237分にもおよぶ長尺であり、DVDも上下巻に分かれているという園子温の監督作品。脚本も監督の手になるもので、何しろ『自殺サークル』の園子温なのでちょっとシュールな内容であるものの、実話をベースにしているという説明があったりして、え、何それほんと?
上巻は物語を担う三人の登場人物ユウ、ヨーコ、コイケの生い立ちが語られるのだけれど、これだけで100分あって、まぁ、長いか短いかといえば、長いのだが、欠落を描くためには、とりあえず「ある」ものを並べていかなければならないのが道理であるからには、致し方のないとこころであるのかも知れない。主人公役の西島隆弘はアイドルグループのボーカルだという話だけれど、盗撮の道を究める壊れた役柄を迷いなく演じて素人臭さはないし、女装もハマっている。同じくヒロイン役の満島ひかりはFolder5出身ということだが、ワンピースの主題歌を歌っていたのどかな時代は片鱗も窺わせることなく、ちょっと荒んだ今時の娘を熱演している。コイケ役の安藤サクラも爬虫類の印象で新興宗教の幹部を演じ異様な存在感を発揮していて、この、邦画好みの異常なキャラクターが全体の基調を支配している。血糊の多さはいかにも園子温で、このあたりに作家性というものがあるのかも知れないが、であるがゆえに、物語的な端正さは期待できそうにない。