『私の中のあなた』を観る。原作はまだ読んでいないが、このテーマはいい。「正常」という名の病理を正面から扱って、よく物語としている。「最後まで諦めない母親」というロールに囚われた難しい母親の役に挑戦したキャメロン=ディアスだけではない。白血病の姉を演じたソフィア=ヴァジリーヴァを始めとして、役者は誰も甲乙つけがたいほど素晴らしい仕事をしていて感服する。演出も行き届いており、たとえば判事がアンに初めて会うシーンでは法衣を纏っていないことがきちんと描かれて、キャラクタに奥行きを与えている。このジョーン=キューザックがまたいい。コミカルじゃない役だってできるのである。結末やら教訓やらは、フィクションならではの端正過ぎるところがあるにして、だからといって涙せずに済むかといえば全くそんなことはないわけである。