『アドベンチャーランドへようこそ』を観る。『トワイライト』のクリステン=スチュワートがヒロインというあたりが華だが、2009年の作品ながら舞台を1987年のピッツバーグにおいて、冴えないアミューズメントパークでバイトをするぱっとしない青年の一夏を描き、ファンタジックなところがまるでないので、その生活臭の強さに面食らう観客も多いのではないか。近年の傾向に従って本邦ではビデオスルー。ライアン=レイノルズも出演しているのだが、この映画にはいかなる種類のヒーローも存在しないので、いつになくうら寂しい役回り。何だってこういう映画が作られるのかといえば、四十歳以上の中年層が往時を懐かしむというあたりが正しい用法であって、その趣向に沿ってはおそらくよく出来ている。立ち上がる気配は、物悲しく、あまり思い出したくないようであり、ほろ苦い。でありながら、クリステン=スチュワートを彼女にするという一点において煩悩は開花しており、であればこのあたりはファンタジーと言えるかも知れず、だったとしても万事控えめであって、確かに1987年のアメリカの気分というのはこんな感じだったかもしれない。